nobi

ぼけますから、よろしくお願いします。のnobiのレビュー・感想・評価

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「どうしてもお父さんに構ってほしいみたいで」自分のことわけがわからなくなって泣きじゃくりながら、とにかくこの人に手を握ってほしいと思う相手がいるのは本当にすごいことだ。しかも手を伸ばしたらその人がそこにいて、本当に握ってもらえるなんて!ふたりの歩みが幸せだったことがよく伝わっていちばん泣いた。忘れたり、覚えてたり、人間ってふしぎだ。

目の前の大人がもうろくして呂律が回らなかったり、子どもみたいに泣きじゃくったり、自分で自分の頭を叩き出したりする光景を、私はよく知っている。あれはもはや本人ではなく、病気や副作用にのっとられていると思えたから割り切れてたけど、老いは病気よりも本人と地続きな感じが辛いなと思った。正常と異常があるのではなく、少しずつ正常の精度が落ちる感じ。
自分も90超えてからそういう風に大切な人が変わりゆくのを見るのは、どんな気持ちだろう?目や耳みたいに、心も鈍くなるんだろうか。結局、脳だからそうなのかもしれない。

もともとのお人柄なのか、お父さんがカラッとしているのがドキュメンタリーぽいというか'リアル'だなと思う。なんか家のどこかでずっと歌ってる声が入ってるし、声が大きいのもちょっと可笑しくて、泣きながら笑った。ちゃんと怒ったり、家事に挑戦したり、筋の通ったかっこいい方だ。みんな四六時中めそめそしてるわけじゃないし、ずっと和やかでもない、そういうのが共存するのが生活だよね。 

自分の周りにも老いがリアルにちらつく年齢になった。遠方のじいちゃんばあちゃんの生活を見に数年ぶりに会いにいったので、帰ったらこれを観るんだと決めていた。まさに、こんな感じでふたりで暮らしている。老老介護。
心は電話やメールでなんとか寄りそえるが、現実的な支援はそばに居ないと難しいことがよくわかった。契約とか掃除とか。孫の私はこれまで心を渡せれば良かったのだけど、そろそろそうもいかなそうだった。大人だから任せて!と思いつつ、まだ自分の中の子供をどうしようもなく持て余してしまう。それだけ愛してもらってきたんだと思う。でもこうやって少しずつ、私も誰かの老いを引き受けて、愛を返してゆくんだ。20年後は親の番で、いつか自分の番、はさすがにまだ想像できないな〜こえ〜
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