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哀れなるものたちのnobiのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
この映画を見終わったとき、私はベラで、しかも生まれたてだった。いつも無心ですり抜ける繁華街の人混みは、変わらず小汚いのに、今夜の私の目は生気に溢れていたと思う。空気が澄んでいるような気さえした。
現実はあの奇妙なのに美しくて、ちょっと可笑しい世界とまったく違うけれど、終わったあともこんなに清々しく前向きな気持ちで歩けるなんて!自分の人生は確かに自分の手に握られている、と信じられることが、プレッシャーよりも安心に思える。まず、自分の世界の神は自分であるべきだと思う。その次に、羽毛ベッドの外に手を伸ばせるのかもしれない。

きっとこれから人生の節目に見返して背筋を伸ばすことになるだろう、と大人になりきってから思った映画は、これが初めてかもしれない。

母に子の脳を移植することで、母とも子とも別の個体としてあるベラ。そこには母や子の経験や記憶はない、という筋の通った事実だけがむしろ奇妙な世界の説得力を増していた。なにか示唆がありそうにも思うけど、母体、母性、生命の誕生というのは、やはり女が逃れられない命題なのだろうか?バービーもそういうパートがあったし。

https://hanako.tokyo/sustainable/416940/

https://www.cinra.net/article/202301-poorthings_gtmnm
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