てつこてつ

ぼけますから、よろしくお願いします。のてつこてつのレビュー・感想・評価

4.5
フジテレビの「ザ・ノンフィクション」は、毎週、欠かさず見ているが、このシリーズは、沢山の作品群の中でも、最も心に染み入る物のひとつ。

監督の住友直子さんには、このシリーズの前、2008年頃にご自身が乳がんに罹り、手術、その後の抗がん剤治療による髪が抜け落ちた様など全て包み隠さず撮り続けた作品もあり、本当に覚悟と強い信念がある映像ドキュメンタリー作家だと思った。

そして、彼女が乳がんで一番苦しい思いをしていた際、彼女の側で、ずっと支え続けてきたのが、当時は、まだお元気であったお母様。

映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」では、そのお母様が、80歳代後半になってアルツハイマー型認知症となり、次第に症状が悪化していく様子を、やはり、住友さんの信念なのか、「自分の母親のこんな姿を世に出せるのか?」と思うほど、時に残酷なほどリアルに、だけど、住友さんご自身がナレーションをされている事で、どこかユーモアすら感じる優しい目線で描いている。タイトルは、認知症を告知されたお母様が娘に向かって、悪戯っぽい可愛い笑顔で投げかけた言葉そのまま・・。

90代後半で腰も曲がったお父様の、ぶっきらぼうながらも、妻への愛情が、まざまざと伝わってきて美しい。この作品は、高齢化社会において、どの家族でも抱えうる認知症に罹った一人の女性を克明に描きながらも、住友監督、お父様の家族愛に溢れる、心打たれる真のドキュメンタリー作品。ご家族で話される呉弁を通して、方言の良さも改めて感じた。

最後に・・
先日放送された「ザ・ノンフィクション」では、この映画の後日談、そして、最後にお母様が亡くなられた旨、報告されていました。心からご冥福をお祈りします。また、お父様は100才を迎えられ、呉市長から表彰されておりました。末永くご達者でいらっしゃいますように。
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