10円様

北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイの10円様のレビュー・感想・評価

3.5
北朝鮮!北朝鮮!北朝鮮!

北朝鮮は常に私たちに恐怖と怒りと笑いを届けてくれる。富裕層は肥えまくり、片や隣の村では子どもが餓死してしまう。なんだかね、こんな風土の国に我々一般人ができる事って風刺しかないんだと思う。もう悲しくて仕方ない、けど国民全員が将軍様のような人ではない。今作は音楽を背負って北朝鮮に和平的交流を挑んだ旧ユーゴスラビアのバンド、ライバッハのドキュメンタリー。芸術は国境を越えるか?うん、これは良かった。ライバッハもそうなんだけど、北朝鮮の歌曲がとても素晴らしい。確かに国家とか朝鮮人民軍の歌とか、偏見なしで「カッコいい曲!」って思えるもん。
民族、国家、主義、思想。絡まると解けないややこしいものを素通りして、音楽ってのは単独で世界を包み込むんだな。

ライバッハの音楽はインダストリアルミュージックといういわゆるノイズをメインにした実験的音楽である。この類の音楽はというと、主に洗脳や拷問等に使われるケースもあるが、ライバッハは単にその限りではない。やはり美しい伴奏と旋律が音楽というものに説得性を持たせカルト的な人気を誇る理由になっている。またネオナチとかネオファシとかを彷彿させるスタイルは、本人達は風刺だと言っているが信じない人が多数。しかし、北朝鮮のヒット曲をチマチョゴリで歌う姿を見ていると、国政とかに偏見なんて持ってないんだなと分かる。実際「君が代」もカバーしてるしね。(これが非常に素晴らしい!)だからきっと右翼的なのは彼らのポーズだよ。

内容はというとかなり行動に規制がかかっていて、北朝鮮のスタッフとの温度差もイライラしてきた。しかし、北朝鮮の女学生との共演なんかはやっぱり音楽っていいなぁと自然と感じてしまう。彼女等が思想的に無垢なだけあってそこに面倒くさい崇拝傾向などなく、ただ単に音楽をやるという姿勢が見えて良かった。
映画的に不満だったのはラストのコンサートシーンがあまりにも少なすぎるという事。結局最初の歌と、コンサート終了後にライバッハを嘲笑するかのような、または妙な音楽を聴かされて落胆しているかのような朝鮮人の表情しか映っていない。これじゃあ鑑賞者が北朝鮮に偏見もつよなあ。ライバッハは北朝鮮をロック出来たのか?
分からん。でも多分ロックしたんだろな。

あとビックリしたのが北朝鮮でもサウンドオブミュージックは昔から愛されている映画だという事だ。あの映画の凄さを改めて感じました。
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