(※後半は単なる観光レポートです)
サンフランシスコに実在する「アメリカで最も呪われた屋敷」こと「ウィンチェスターハウス」を題材にしたホラー。
「増築し続けないと、死ぬ」
ってアオリに書いてあるけど、特に死なない平和な作品。
ウィンチェスター銃を製造するウィンチェスター社の未亡人サラ・ウィンチェスターは、何かに取り憑かれたように自分の屋敷を増築し続けている。そんなサラを精神鑑定するために、阿片中毒の精神科医プライスが送り込まれる。その屋敷には、ウィンチェスター銃で家族を殺された最強の亡霊が取り憑いていた、という内容。
途中、亡霊の正体が明かされるシーンだけオッと思ったものの、それ以外は特筆すべきこともない普通のホラー。というか、名作SF「プリディスティネーション」の監督コンビなんだけど、脚本と展開がユルユルすぎる。
もしかして、ウィンチェスターハウスに倣って、この脚本も増改築を繰り返して平凡な作品になったのではないかという気がしてならない。
あと、今回の亡霊、ウィンチェスター銃で家族を殺されたから、ウィンチェスターハウスに取り憑くんだけど、いくら何でも逆恨みじゃない?
もちろん、アメリカの銃社会は無くなってほしいけどさ、そんなんだったら自動車事故で亡くなった人はトヨタとかフォードを恨まなきゃいけないし、ガス爆発起こして東京ガスを恨んだりしないよね?
……とまぁ、そんな感想はさておき、今回なんでこの作品を観たかというと、実際に先日、「ウィンチェスターハウス」に行く機会があったから。
(以下、作品と関係ない観光レポートです)
<ウィンチェスター・ミステリー・ハウス>
ウィンチェスター・ミステリー・ハウス(以下、ウィンチェスターハウス)の場所は、サンフランシスコの南にあるサンノゼ国際空港から車で30分くらい。ちょうどサンノゼ空港で降りて時間あったので、観にいってみた。
連れてってくれたUBERの運ちゃんに道中、
「この辺はあそこしか観光地ないから、観光客はみんな行ってるけど、あんなとこ行って面白いのか?」
と言われたあたりから、一抹の不安がよぎる。
ついでに、運ちゃんは
「ウィンチェスターハウスの向かいにあるスーパーのカフェが、雰囲気よくてオススメだ」
と親切に教えてくれた。それウィンチェスターハウス、関係ないやん……。
そんな会話をしていると、ついにウィンチェスターハウスに到着。
おお、結構デカい!
門の横のプレートに、「ここはアメリカで最も呪われた屋敷」みたいに書いてある。これは「ムー」好き(ムー民)の俺にとってはワクワクする。昼下がりなのでおどろおどろしい雰囲気に欠けるが、そんなの気にしない。
門をくぐると、そこに現れたのは、ファンシーなお土産ショップ。
可愛いマグカップとか、ドクロをあしらった靴下、ジグソーパズルや絵葉書が並んでる。
いやいやいや、「アメリカで最も呪われた屋敷」のハズですよね?
満面の笑みで若いお姉ちゃんが「ウェルカム!」って歓迎してくれるのは嬉しいんだけど、もうちょっと、こう、背筋が曲がって黒いマントを着たおばあちゃんが「ウヒヒヒ」とか言いながらロウソク持って出てきてほしいんですけど!?
この時点で、40ドル(5500円)も払ったことを後悔し始める。
お土産ショップを抜けると、ウィンチェスターハウスの入り口へ。ここがツアーのスタート地点。ツアースタートまで10分くらいあったので、外をウロウロしてみる。
「いまでも増築を続けている」だけあって、まばらにいまでも、屋根の修理してる大工さん、ペンキ塗り替えてるペンキ屋さんとかが働いてる。そうこうしてるうちにスピーカーで「14時のツアーの人は集合してー」とアナウンス。
ツアー参加者は約10名。ボッチの俺以外は、親子連れかカップル。隣のカップルのガタイの良いお兄さんに声をかけられる。
「お前、どっから来たんだ」
「に、日本です」
「……何でこんなとこ来たんだ」
「いや、日本の雑誌(ムーのこと)で有名で……」
「ふーん(興味なさそう)」
まさに「Youは何しにサンノゼへ?」と聞かれた気分。てか興味ないなら聴くなや。亡霊さんたち、いますぐ出てきてくれて、このUSアーミーみたいな兄ちゃんを呪い殺してくれませんかね……。
ツアー開始は、入り口で一組ずつ記念撮影。ほんと、こういうときボッチ旅行だと気持ちが引き裂かれる。「スマーイル!」とか言って撮影してくれても、俺、買わないし……。
ツアーは約1時間10分。
映画でも出てきた細い階段、行き止まりのドア、塞がれたままの天井への階段、召使いを呼び出すためのパイプ、印象的なシャンデリア、12時を知らせる鐘、そして、1906年の地震で壊れたままの一区画など、一通り見て回ることが出来る。
映画を観たのはこのツアー後なのだが、確かに映画と同じ場所だーって感動はあった。聖地巡礼……ってか「呪いの地巡礼」になるのかこれは?
ウィンチェスターハウス自体は各部屋が狭いので、映画の撮影はほとんどスタジオのセットで行われたということだが、かなりちゃんと再現してあった。
ただ、真っ昼間だし、ポカポカ暖かいので、呪い殺されるような恐怖感は一ミリもない。おそらく亡霊たちも外に出てひなたぼっこしてるんじゃないだろうか。
どちらかというと、俺が連想したのは、熱海とか別府あたりの、増改築しまくった温泉旅館。もはや、浴衣姿の亡霊が大浴場に向かってウロウロしてても不思議じゃないなーと思った。増改築しすぎて、亡霊もどうやって行けば分からなくて途方にくれてそう。
これに40ドル払うなら、熱海の温泉旅館で日帰り入浴したほうが良かった……。
特に呪われることもなくツアーは終了。一ミリも怖くなかった。
まぁ、映画も怖くなかったから、本家の屋敷が怖くないのも当然か……。
これが「アメリカで最も呪われた屋敷」なら、事故物件サイト「大島てる」で炎上しまくっている、新宿の俺のアパート周辺の方が、よっぽど呪われてるんですけど……。
ちなみにツアー冒頭にぼっちで撮ってもらった写真には亡霊の姿もなく、単なるぼっち観光客の記念撮影でしかなかったので購入せず。
代わりに、ウィンチェスターハウスのスノードームを購入。タクシーの運ちゃんに勧められた向いのスーパーのカフェで休憩したのち、「アメリカで最も呪われた屋敷」を後にしたのでした。
(おしまい)