荒野の狼

アンダーグラウンド 完全版の荒野の狼のレビュー・感想・評価

5.0
「みんなで、何してるの?」
人間が生きてるってことは、一歩引いて眺めてみればこういう事でしょう。心臓は死ぬまで一度も止まらない、だったら5時間なんて短いもんだ。
いったい何をやっとるんだろうね、と嘆くもよし。しかしながら全部「事実」じゃないか。これが嘘だというならこの世だって嘘。ドタバタってならこの世界だってドタバタでしょう。誇張でも極端でもない、もしそうじゃない思うなら、各シーン各場面を少し薄めてご覧、そこにあなたのそのまんまの日常が見て取れるだろう。身に覚えがあるものばかり。例えば70年の人生を或いは有史を、もし5時間に圧縮したら、一週間が1分なら絶対こうなる。そう確信のもとにカメラを回したにちがいない監督に幸あれ。ある意味これこそ「ヒューモアあふれる神の目線」である。ここにあるのは「バカ息子ほど可愛い」であって、決しておめでたい「人間讃歌」などではない。縮図を撮ることにおいてフェリーニとの共通点も見て取れるだろう。カメラだけがいついかなる場面でも、動じる事なく無言を決め込んでいる、人類の悲喜劇の果て、きっとそこに救いはあると。5時間越えのこの映画の終盤が近づくに従って、多分誰もがこう思う「終わらないでくれ人間よ!」
紛れもない感動溢れる大傑作でしょう。
荒野の狼

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