前作はスパイダーマンがピュッピュピュッピュと白いものを出すのを飛ばし見(意味深)して、短い感想しか書けなかったのですが、今回はちゃんと見ようとチャレンジ。
なのに、MCUつまみ食いしかしてない俺、開始早々おいてけぼりに……。
前作の続きかと思いきや、「あしたのジョー」の丹下段平そっくりの眼帯オッサンと、頭に金魚鉢をのっけたキン肉マンの悪魔超人みたいなコスプレ男が巨大怪獣と戦ってる……。スパイダーマンは、どこにいったのだ……。
「5年間どっかにいってました」
なんじゃそれ!? ……この答えを聞いても謎は深まるばかり。なんか宇宙にも行ってたとかゆってるし。俺の脳内、「??」の嵐。
急いで一時停止してググったら、どうやら前作との間に「アベンジャーズ/エンドゲーム」が挟まってるらしい。そんなん聞いてないよ!
さすがに、これだけのために「エンドゲーム」三時間を観る気になれず、とりあえずネットであらすじだけ読んで、理解。なるほど……。
と、かなり初見殺しの作品だが、全体の構造を理解してからは面白かった。
ベネチア→オーストリア(地名不明)→プラハ→ベルリン→オランダ(田舎の村)→ロンドン。
完全に「JTB LOOKで行くヨーロッパ周遊旅行」を地でいくスパイダーマンご一行さま。行く先々で活躍を見せるスパイダーマンの姿に、「スパイダーマン抜きで修学旅行いってたほうが平和だったんじゃない?」と言いたくなる。特にベネチアとロンドンは、「ゴジラに負けない!」とばかりに、徹底的に街を破壊していく。
でも、やっぱスパイダーマンが、街中を縦横無尽にすり抜けるサマは格好いい。変な例えで恐縮だが、お婆ちゃんが針に糸を通してるのを横でずーっと観察してるような感じ。
今回の悪役、ミステリオを演じるのはジェイク・ギレンホール。何を考えているか分からないようなミステリアスな表情。「ナイトクローラー」で演じたサイコパスジャーナリストが、輪をかけてコジらせてるようで、とっても魅力的。空中を飛び回り、手からビームを出す(という設定)。
前作ではピュッピュピュッピュと白いものをところ構わず飛ばしまくっていたスパイダーマンことピーター・パーカーであるが、今作では出すときは出す、と節度を持つ大人になった感じがした。
特に、クライマックス。大人のオモチャ(スターク社製)をカスタマイズしてからのピュッピュっぷりは芸術的。なんか以前見た汁男優が加藤鷹になって再登場したような興奮を感じることが出来た。
というわけで、スパイダーマンの成長っぷりと、さらにそれを滅茶苦茶にするミステリオの活躍のおかげで、スパイダーマンの行く末が気になる終わり方。次回作も楽しみです。
それにしても、MCU、ビームみたいなのを手から出すキャラクター多すぎじゃない?
アイアンマンとかキャプテン・マーベル。ヴィジョン。スパイダーマンの悪役・エレクトロ。
目からビームを加えると、ヴィジョンや「X-MEN」のサイクロップス、「エターナルズ」のイカリス。
ここまで来たら、そろそろ、両耳からビームを出して、左右の敵を殲滅するヒーローが出てくるんじゃないか、って気になってくる。
そこまで行ったら、次は尻からビームを出すヒーローまであと一歩じゃないか。
でも(ediさんも前作の俺の感想のコメントで指摘してたけど)そもそも蜘蛛って尻(正確にはお腹)から糸を出すわけだから、スパイダーマン本人だって、手からじゃなくて、お尻から白いものをドロリと出してもいいわけで……。
あれ、そうするとホモのアナルセッ……いや何でもないです。
ま、とにかく、尻からビームを出すヒーローが登場するなら、その節は、ぜひ江頭2:50さんにご出演頂けるよう願っております。
■ウェイ・トゥ・ノー・ウェイ・ホーム
以上で、この作品の感想はおしまい。
さて、「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」に至るまで、マーベルとソニー・ピクチャーズ(以下SPE)の間には色々な出来事があった。
マーベル倒産からのSPE独占権獲得。スパイダーマンが大ヒットしたSPEは、リブートに失敗。そのスキにMCUが大ヒット。最終的には北朝鮮まで絡んで、MCUに参加する、という映画顔負けの四半世紀。
俺自身へのメモって意味も含めて、以下に書いておきます。
🕷️1998年
マーベル・コミックスが、人気キャラクター「スパイダーマン」関連の映画化・商品化の権利をソニー・ピクチャーズ(SPE)と独占的に契約。契約金は20億円(1ドル=100円で計算)。
追加で15億円支払ったらマーベル・コミックスの全作品の権利がSPEに独占契約されるところだったが、SPEは「スパイダーマン以外、興味ない」と15億円支払って、「スパイダーマン」だけSPEのものに。
以後、5年9ヶ月ごとに「スパイダーマン」の新作映画を作り続ける限り、SPEは「スパイダーマン」の独占契約を保持することとなった。
🕷️2002年
サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の「スパイダーマン」が大ヒット。興行収入830億円。利益250億円。「鬼滅の刃 無限列車編」の世界興行収入が517億円なので、これが如何に大ヒットか分かってもらえると思う。
直ちに続編の話が出るが、トビー・マグワイアとのギャラ交渉が難航。一時はジェイク・ギレンホールが代役候補に上がったとか。
結局トビー・マグワイアの続投が決定し、ジェイク・ギレンホール話はナシに。もし平行世界でジェイク・ギレンホールがこのオファーを受けてたら、今作でのミステリオが誰になってたんだろう。
ちなみに、MCUのオープニングで毎回流れる11秒のロゴ映像。一番最初に登場したのは、この「スパイダーマン」。制作費は800万円だったとのこと。
🕷️2004年&2007年
「スパイダーマン2」「スパイダーマン3」が大ヒット。ただし、SPEは、「3」で興行収入が860億円を記録しているのに、制作費もうなぎのぼりとなったために、「1」の65%、160億円の利益しか得られなかった。
🕷️2008年
「スパイダーマン4」計画始動。同じサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の予定だったが、制作費が200億円にハネあがる。同じ2008年公開のマーベル・スタジオ(以下マーベル)第一作「アイアンマン」の制作費は150億円。SPEは、この制作費のエンパイヤステートビルに登るスパイダーマンのような上昇っぷりに、「映画がヒットしても儲からない」ジレンマに陥る。加えて、サム・ライミも交渉中に「もうやりたいことはやり尽くした」と、情熱を失い、「スパイダーマン4」は暗礁に乗り上げることに。
🕷️2010年
2013年までに「スパイダーマン」を公開しないと権利を取り返されるので、SPEは「スパイダーマン4」を諦め、「500(日)のサマー」のマーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演でのリブートを決断。
🕷️2012年
「アメイジング・スパイダーマン」公開。興行収入は760億円とマズマズだったが、同じ2012年に公開された「アベンジャーズ」の1500億円の約半分。
「アメイジング・スパイダーマン」の試写を観たマーベルの幹部は、一様にシブい顔。特にマーベルのケヴィン・ファイギは「暗くて鬱展開すぎる」「そもそも、何回も同じスパイダーマンの誕生物語を観たいか!?」と酷評。
🕷️2014年
4月に「アメイジング・スパイダーマン2」公開。興行収入は700億円だが、制作費が250億円と高騰。特に一番利益率の高いUSの興行収入が200億円と低迷したことで、利益は「スパイダーマン1」の三分の一以下の70億円と惨敗。
ここでSPE内部でも「MCUにスパイダーマン出したい」派(当時のSPE社長、マイケル・リントン)と、「独自のスパイダーバース」を展開する派(プロデューサーのエイミー・パスカル)で意見が分かれる。
ちなみに偶然だが、マイケル・リントンは、マーベルが倒産して再建するときに、マーベルの取締役だった人。
マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギは、エイミー・パスカルを説得しようと「MCUでスパイダーマンを出す」構想をプレゼン。エイミー・パスカルは怒ってサンドイッチをぶつけ、「出ていけ!」と、ついでに言葉もぶつける。
エイミー・パスカルは何とか挽回を図ろうと画策。
「アメイジング・スパイダーマン3」は一旦延期にし、ギャラ10億円を要求した監督のマーク・ウェブを切って、「キャビン」で才能を示したドリュー・ゴダード監督に「ヴェノム」や悪役勢揃いの「シニスター・シックス」の映画を準備するよう指示したのだ。
ちなみに、「スパイダーマンが恐竜に乗って戦う」ような構想だったとのこと。それはそれで観てみたかった。
🕷️2014年11月
ここで急展開。なんと、このタイミングで、SPEへのサイバーアタック事件が起こる。この事件は、当時北朝鮮を批判的に扱ったセス・ローゲン監督「ザ・インタビュー」への北朝鮮による犯罪だとFBIが断定している。
ともあれ、大量の内部メールが流出し、SPEがマーベルとMCU参加について交渉していることが明らかに。ついでにエイミー・パスカルの給料とか、マイケル・リントンが「女性のスーパーヒーローは成功しない」といったメールをやりとりしてたことも明らかになる。いやいや、いつどこで流出するか分からないもんですね……。
ともあれ、このリークしたメールの内容を知ったファンは
「なんでSPEはスパイダーマンのMCU入りを邪魔するんだ!」
と激怒。そのプレッシャーに耐えられず、SPEはマーベルと再交渉開始するハメになった。
🕷️2015年
マーベルとSPEは、スパイダーマンのMCU参加で合意。
エイミー・パスカルは、SPEを辞職。「スパイダーマン」に関しては、引き続きエイミー・パスカルがマーベルのケヴィン・ファイギと共にプロデュースを続けることとなった。
🕷️2017年
「スパイダーマン: ホームカミング」公開。全世界880億円の大ヒット。
これは余談だが、SPEを辞めたエイミー・パスカル、「ペンタゴン・ペーパーズ」をスピルバーグ、トム・ハンクス、メリル・ストリープと共に自分のスタジオで制作。これまでは縁のなかった「アカデミー賞」にノミネートされる。この作品、SPEが断って20世紀フォックスが配給。20世紀フォックスは後日ディズニーに買収されているので、エイミー・パスカルとマーベルの不思議な縁を感じてしまうエピソード。
🕷️2019年
「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」公開。これまでの記録を塗り替える1100億円の特大ヒットを記録。
SPEとマーベルの合意が決裂しそうだと報道されるが、主演のトム・ホランドが仲裁して、元サヤに収まった模様。
🕷️2022年1月
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」公開。←今ここ。
※年表の大部分は「The Big Picture / Ben Fritz」より抜粋
四半世紀におよぶ蜘蛛の糸のように張り巡らされた紆余曲折の末の次回作。俺的にはとっても楽しみにしています!
(おしまい)