あてくしの実家には将棋を嗜む者が二人いて、家では駒のパチンと小気味よい音がしょっちゅう聞こえた。じゃあお前も指せるんだよなと問われたら駒の動かし方はわかるよとしか言えないのだが、奨励会の厳しさは小学生の頃から知ってはいた。そうそう、家人が小学校高学年だった時にちょっとした将棋大会に自信満々で出場したら低学年の男の子に秒で負けたんだわ。それが後の羽生さんだっていうのは今では誇りらしい。
今作はメインの話がその奨励会のこと。そこから瀬川棋士の人生が怒涛の展開になる。個人的には奨励会の厳しさを描く時間をもう少し短くして、奨励会を去った後の瀬川棋士のことをもっと掘り下げて欲しかったなと思った。なぜなれこれまでの将棋界において彼のような人はいないのだから。古めかしい世界に風穴を開けたご本人の話に刮目せよ。
役者陣も豪華な顔ぶれで、チョイ役に妻夫木くんも出てる。話を通して観ていて心がチクチクしたのは、彼の恵まれた環境。羨ましさしかなかったな。小学校の先生が夢へ後押ししてくれたりご両親が支えてくれるのって、ご本人の生まれ持った運としか言えなくてさ。こればっかりは本人の努力ではどうにもならんのよ。
瀬川さんの部屋がたまり場になってたくさんの奨励会仲間がわちゃわちゃやってるのを見て大学時代のサークルのことを思い出しちゃった。あの時期の楽しさは長い人生のほんの一瞬のきらめきかってくらい心の宝石箱なんだよね。って彦摩呂じゃないよ。
