ガンビー教授

女王陛下のお気に入りのガンビー教授のレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
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ヨルゴス・ランティモスという映画監督にはさほど熱心にのめり込めないのだけど、これは良かった。やはりこれまでとは全く別のところからもたらされた脚本というのが良かったんじゃないかと思う(この監督のファンには何言ってんだ、と言われるかもしれないけど……)。

自然光など用いてバチバチに決まったショットやその空間の中で奇矯に暴れる役者たちはもちろんキューブリック(とりわけ『バリー・リンドン』)を連想させるが、魚眼レンズも用いられた画面はキューブリックの優雅さと色気より息苦しさと圧迫感を感じさせる。ヨルゴス・ランティモスという監督は悪意と嫌味の人なんだけど、こと本作について言えばそこにあまり嫌悪感というか生臭さのようなものが漂ってこないのは、脚本の良さも相まってそこに投げ出される人間の姿というものに、いかにも人間ってのはこういう変な生き物だ、と納得させられてしまう説得力が十分に備わっているからではと思う。また三者三様に変な生き物としての人間を体現してみせた3女優のアンサンブルがとにかく素晴らしい。特にサラみたいな女性、ほんとツボです。

宮廷ものだけど史実の再現にはそこまでこだわってなくて、着飾った衣装もほとんどコスプレのように見えてくるときがあるのだが、それが本作にとっては全くマイナスになっていない、と感じた。
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