幽斎

侵入者 逃げ場のない家の幽斎のレビュー・感想・評価

侵入者 逃げ場のない家(2015年製作の映画)
4.2
2015年6月にロサンゼルス映画祭で絶賛された低予算スリラー。USのストリーミングが初見だったが、ゲオ傘下のブルークがまたやってくれた。原題は「Shut In」だが、同名の2016年「Shut in」私の好きなNaomi Watts主演作と被るので、劇場公開時に「Intruders」と言うタイトルに変更「させられた」US版ポスターは「キャビン」風でカッコ良い。

Adam Schindler監督は「Killing Floor」と言う短編ホラーで注目され、本作で長編デビュー。日本で言う2時間特番のプロデューサーが本業で、映画監督に執着して無い様だが、特番で鍛えた演出力は申し分ない。主演のBeth Riesgrafも実に良い、年齢不詳に見える存在感が意外と癖になる。実際は42歳で、彼女もプロデューサー業を兼ねて、TVシリーズ「レバレッジ~詐欺師たちの流儀」の主要キャストで活躍してるらしい(ドラマは見ないので(笑)。因みにRory CulkinはMacaulay Culkin兄弟の4男坊。

広場恐怖症(Agoraphobia)、スリラー小説によく出て来る精神障害の1つ。広い場所がダメに思われるが、ソレは違う。一般的にはパニック障害に分類され、オープン・スペースだけで無く、旅行や公共交通機関、逆に閉ざされた部屋もダメで、その適応は幅広い。根本に有るのは「社交不安」で有り、その点は本作でも取り上げてる。小説や映画では使い勝手の良いプロットだが、実社会での克服は基本的には難しいとされる。

鑑賞後何かに似てると思いませんか?そう、2016年公開「ドントほにゃらら」。注目して欲しいのは、本作の方が製作が早い事。プロデューサーSteven Schneiderはスリラー界では有名人で過去にも「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ、「インシディアス」シリーズ、「スプリット」「ミスター・ガラス」最新作は「ペット・セメタリー」と辣腕ぶりを発揮。彼の様な目利きが新人発掘に貢献してると言っても過言で無い。

ヒロインの成長物語が良い半面、兄が妹を助ける、と言う重要なシーンを台詞のみで片付けるので、感情移入と言う点で物足りない。父親の行為にしても、きちんと描写するべきで、この2点を追加するだけで、物語に奥行きが出た筈。広場恐怖症でヒロインの行動を縛る事で、スリラーの面白さが増し、それがエンディングで帰結する見事なシナリオ、手放しで褒めたい。

有名なアレは多くのフォロワーを生み出したが、プロットは本作の方が深みが有って面白い。無名な製作陣故にタイトルまで変更させられ、後出しジャンケンで大ヒットしたアレで霞んだ不遇の作品、色々と考えさせられる。

面白いスリラーをお探しの方に諸手を挙げてお薦めしたいが、少し褒め過ぎかも(笑)。
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