ガンビー教授

イット・カムズ・アット・ナイトのガンビー教授のレビュー・感想・評価

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エンドロールが洋画にしては短い。おそらく、かなりの小規模で撮られている。限定的な舞台しか映し出されず、キャストはきっかり7人を超えない。劇的なビジュアルエフェクトがあるわけでもない。しかしやはりA24映画の強さを感じさせられる小品に仕上がっている。

暗闇や森へ迫るカメラは日常的なはずの空間や舞台を異化する。優れたホラー映画というのは「世界の見え方を変容させてしまう」力を持っている(だからホラー映画が成功するかどうかは「撮り方」に委ねられている)。

クワイエット・プレイスという作品が少し前にあった。あれは特殊ルールを持ち込んだ世界のなかで滅亡寸前の光景を描き出し、なぜかアメリカがどこかでノスタルジアと共に抱えている牧歌的幻想(理想)みたいな暮らしを表出させていた。それがあの映画の不思議な味わいになっていたが、『イット・カムズ・アット・ナイト』はその意味において『クワイエット・プレイス』の裏面に思えてくる。家族の物語であり、内側から崩壊していくヴィジランティズム、そして「(宗教的な意味を含む)隣人」に何を為すのかということ。ツイストなどは無いが、皮肉が効いたストーリーテリングに惹かれる。

というか、僕が『クワイエット・プレイス』で見たかったのはひょっとしたらこういうものだったのかもしれない。
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