Tully

クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリのTullyのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

本作ではゲストキャラの宇宙人シリリが完全に主人公であり、野原一家はシリリの引き立て役に徹している。苦悩する真面目なキャラクターであるシリリが主人公なので、映画全体も心理描写を重視した真面目でシリアスないつもと違う雰囲気になっているのだ。ジブリアニメみたいな情感溢れるテイストのシーンも多々ある。シリリ役の 「沢城みゆき」さん の複雑な感情の変化を表現する芸達者ぶりを存分に堪能できるがクレしんならではの破壊力のあるギャグは控えめになり、あくまで 「クレヨンしんちゃんの映画」 として観るとイマイチになってしまうかもしれない。過去作のキャラのカメオ出演捜しも確かに楽しいといえば楽しいけれど、あまりに多くて映画ではなく 「ウォーリーをさがせ」 や 「ミッケ」 を見ている気分になってくる。今までにないタイプの 「クレヨンしんちゃん映画」 と評すれば聞こえはいいかも。宇宙人との出会いが題材だけあってまさに 「未知との遭遇」 だ。テーマの面においても、高圧的で独善的なシリリの父との和解は結局最後まで描かれず 「父に背いて対立してでも子は自立すべきだ」 という結構ドライな結論で終わるのも賛否が大きく分かれるところかもしれない。エンドロール後の映像で上手いこと皮肉なオチがついているので私は結構好きかな。「いつものクレヨンしんちゃんの映画」 は期待し過ぎず、あくまで 「健気で可愛らしい宇宙人が苦難と驚きに満ちた旅の中でほろ苦い経験・葛藤を経て成長する姿を描いた良質なジュブナイル」 として観たほうが無難に楽しめるし感動するだろう。いっそのこともっとギャグや小ネタを減らしてシリアスの純度を高めればクレヨンしんちゃんでやる意味がないと批判も多かった。かの二大名作「オトナ帝国の逆襲」「アッパレ戦国大合戦」に匹敵する作品になったのかもしれない。
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