Tully

17歳のカルテのTullyのネタバレレビュー・内容・結末

17歳のカルテ(1999年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

大学に進学しないのは自分だけ、世間体を気にする両親にも理解されない17歳のスザンナは、多量のアスピリンとウォッカを摂取したことで精神病院に入院。顔にやけどを負った子、鶏肉と下剤しか口にしない子、病的な嘘つきなど様々な少女たちがいる。就寝時や入浴時など、常時厳しい監視下をかいくぐり、深夜、少女たちは患者のリーダー格リサを中心に、自分のカルテを盗み見たり、遊んだりしていた。ある日、リサから脱走を持ちかけられたスザンナは既に退院した少女の家に身を寄せることになった。だがリサは退院した少女が父親と性的関係を持っていると詰り、彼女を自殺に追い込んだ。人の死を前に何もできなかった自分に涙を流すスザンナは、それ以降自分の気持ちを日記にしたため、精神科医や看護婦に思いを打ち明けるようになった。脱走中のリサと離れて安らぎすら覚えるようになったスザンナはいよいよ退院する運びとなり、リサに別れを告げる。だがその晩、リサは他の少女たちの前でスザンナの日記を読み上げ、仲間のことを書いたことで彼女を責めたてる。スザンナは、リサの心は冷えきっていて、既に死んでいると言い放つ。翌朝、手足をベッドに縛り付けられたリサは、退院するスザンナに私は死んでいないと涙ながらに呟くのだった。夢見る気持ちを捨てられず、それでも周囲の現実に振り回され、何もできない自分に辟易してる。混乱し、不安に苛まれ、自分の周囲で目まぐるしく変わる世界に意味を見出そうと必死になる。正直、こんな世の中全てに嫌気がさして、自分だけはそうじゃない、そうはなりたくない、でも何をしたらいいのかも分からない自分がいる。自分が異常だったのか、時代のせいなのか、ただ単にありがちな躓きだったのか。そんな寂しさの中で夢と現実を彷徨っている自分がいる。何もできない自分。誰からも相手にされない心。時間だけがただ過ぎていき、世の中に埋もれていきそうな焦り。自分の責任を他の誰かに、他の何かに押し付けて生きている。そんな我儘も、きっと病気の1つなんだと思う。誰もが蝕まれる、心の病。自分が病であることさえ知らずに多くの人は、やがて自分を失っていき、ひょっとしたら一生、この病気から逃れられなくなる。自分を見失って、しかも何を失ったのかさえ分からずに、騙し騙し生きていくなんて、きっと耐え難いことだと思うから。だから、諦めない。見失っていた自分を取り戻すため。だから、闘っていく。巻き込まれそうな、世の中のルールと、なによりも挫けそうな自分と。最後に胸を張って夢を口にする、誰にも真似できない 「自分」 を築き上げていくために。
Tully

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