ケリー・ライカート監督の作品が5月で配信が終わってしまうとの噂があり、せっかくの機会なので未見の作品を見始めた。昔の友達と久しぶりにキャンプに行くという内容なのだが、この監督特有の哀愁というか、うまく表現できない感情が込み上げる。
マークは妻の出産が控える中、旧友のカートからキャンプの誘いがあった。冒頭、庭で禅をするマークと、室内で物質に囲まれる妻の対比が印象に残る。
カートは昔と変わらず少年の様で(見た目は髭もじゃ笑)、その日暮らしをしていた。二人、そしてマークの飼い犬ルーシーと車で秘境の温泉へ向かうロードムービーになる。初め、ラジオで政治の話題が話されていたり、妻からの電話があったりするが、だんだん山に入ると現実から解放される。
この旅自体が現実逃避の様で、「リバー・オブ・グラス」との共通点を感じた。旧友と自然に入り込むのは、時間は進んでいるけど過去に逆行している様でもある。それを通して、自分の中で決定的に何かが変わってしまったことに気付かされる。その頂点に温泉に入浴するシーンがあり、変わってしまったけど大切なものが優しく描かれていて泣けた。