フライ

ふたりの死刑囚のフライのレビュー・感想・評価

ふたりの死刑囚(2015年製作の映画)
3.7
法治国家であり、近大日本において未だに続く間違いを認めない国の傲慢が良く分かるドキュメンタリー

当時倫理観の無い警察が強要した自供と、検察の提示し矛盾した証拠で裁判官により犯人とされた二人の死刑囚、袴田巌氏と今は亡き奥西勝氏の怒りと無念が伝わって来るドキュメンタリーだが、同時にこれ迄山ほど警察と検察がつくって来た冤罪事件への警鐘を鳴らす作品。
怒りしか湧かないこの事実を仲代達矢の落ち着いたナレーションにより冷静に受け止めさせてくれ、余計心に訴えかけるものが。

こう言う作品を観ると日本の中枢は戦前から変わらないのだなと強く感じてしまう。保身の為自分達の間違いや、変わらなければならない事に目を伏せ、隠し、再審請求を退け続ける裁判所の姿勢に、昔の間違った考えを強要、国民を騙し戦争へと突き進んだ国の姿が重なり、改めて心から信用してはならないのだと強く感じる。何より冤罪による罪の深さは、彼らの人生を失わせるだけでは無く家族や関係者、被害者家族の2重被害により生活を狂わせる上、真の犯罪者を野放しにして、他の被害を出し更なる被害者をつくる恐ろしさが有ると言う事実。

ニュースを見ているだけだと死刑と言う最高刑を科された人がなぜ無罪になったり、刑を保留されているのか分からないし、自分が住む日本の裏の顔や犯罪者を探す為の強い制度を作れない理由などを知ると言う意味でも、出来るだけ沢山の人に見て欲しいと思える作品の一つ。
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