MrFahrenheit

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

3.4
グザヴィエ・ドランはデビュー以来ずっと気になっている監督だが、正直に言うと少し物足りなかった。

お馴染みのテーマ、母との確執とセクシュアリティがこの作品でも核になる。社会への批判をドランがここまで直接的に描いたのは本作が初めてだと思う。今まで彼が映してきた世界の延長であり、その点に私は好感を持つが、キャストや映画のスケールを広げた結果なのか、焦点がボヤけた印象。心に響きづらかった。小さな世界でも胸がヒリつくピリッとした持ち味が、本作ではぼんやりとうるさく感じられてしまう。選曲やマイ・プライベート・アイダホのオマージュシーンにも、センスの良さより計算してメッセージをねじ込むようなくどさが気になった。

とは言え感動ポイントが全くなかったわけではなく、印象的なシーンはいくつかあった。タイトルにある”死と生”、ジョンの死がルパートの生につながる構図は素直に美しいと思うし、物語が伝えようとしているメッセージは理解も賛同もできるので、キャストや撮影が豪華な分、尚更もったいない。出演シーンは僅かだが、マネージャー役のキャシー・ベイツは流石の演技と迫力だった。