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バービーのnobiのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.5
バーベンハイマーの件はさすがに、普段から原爆を意識することが少ない私でも憤りを感じたし、観るか迷ったけど、本当に観て良かったなと心から思った。

バービーワールド=女社会、リアルワールド=男社会という構図で、男女ともにそれぞれの世界のマイノリティに追いやることで「flat」を描く脚本の凄さ!ケンもバービーもあなたもわたしもマイノリティになり得る。男だ、女だ、ホモソだ、フェミニズムだという段階を抜け出して、「人間同士」「あなたと私」になるときなんだと思える作品。あと最後は産婦人科ではなく、婦人科だよ!!!検診行こうね!だよね!?

メッセージは強い一方で、キラキラピンク調の世界観は💖🌈な感じでとてつもなく可愛いし、皮肉めいたジョークやオマージュ、トンチキ演出が盛り込まれて軽快なトーンで見れる!USJのターミネーターで流れるみたいな輪廻映像ちょっとおもしろかった。

しかも「こういう時代だから、そういう話を作りました〜」ではなく、マテル社がずっと女性に向けて商品を作ってきたからこそ、そのなかで本当にある種エンパワメントを担ってきた自負があるからこそ、今、説得力をもってこの作品を出せるのだ!それがどれだけすごいことか。
母親のことを元気づけてきたバービーが、その娘のことは元気づけるどころか苦しめているという紛れもない現実を受け止めて、その責任をとるんだ、自分たちの手でアップデートすべきなんだという強い覚悟を感じて、いち会社員として感服した。
セルライトバービーの提案を売れますね、でコロッと態度変えるのも面白くて、あくまでバービーは資本主義から生まれているものだ、という大前提をここで突きつけてくること。この気の抜かせ方とハッとさせ方が上手いなあと思う。売れるって民意ってことなんだと思うと、バカになりたくないしバカばっかの世の中にしたくないよな。
恋愛否定だという意見があるが、バービーは「なんでも男女=恋愛に落ち着かせる風潮」「恋愛における男女の役割」にアンサーを提示しただけど感じた。ケンはケンで、バービーのボーイフレンドではない。逆もまた然り。であって、けして恋愛そのものを否定してはいないのでは。
たしかに現実で起きている恋愛における男女の不均衡や性的指向みたいなトピックは、この映画では、解決されていない。ただ2時間の映画のなかで、主題に関連するトピックを全て拾えるものではないし、だからアジアや人種問題にも踏み込まずなのでは?結局問題に向き合っていない、それこそホワイトフェミニズムだ、と言われたら確かにそうかもしれない。自分は日本で生きているのでアジア人の弱者性には無頓着な部分もあるだろう。
でも、どちらも「マテルやバービーが当事者として語るべき主題ではなかった」に尽きる気がする。むしろ自分たちが引き受けるべき責任をまずはまっとうしたような、マテルの誠実さなのではないか。そして、次の結末は私たちに委ねられている。

ひとりでも多くの「人間」の心に届くことを願って。

2回目、構成とかじゃなくて感情で観てみた。人間になるって…という描写が多いし、めちゃくちゃ人間讃歌だけど、人形讃歌でもあったんだな〜。お母さんが「でもそれってあなたにも当てはまるの?女を形どった存在だから?そんなのおかしい」というところ、人形だから夢を見せれるのだ!という力強い肯定。そのバービーが人間の心を傍受して涙を流すあのシーン、とても人間讃歌。お互いに肯定していこ。ほんとに全てを肯定している。なんでもいいんだよ、ということ。

*ここに自分は描かれていないと感じたという感想を見た、忘れたくないので追記しておく。個人的には誰もがマイノリティ性に共感できるのではと思いつつ、記号が明確ゆえそうではない=疎外と思う可能性は高いのかもしれない。
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