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美術館を手玉にとった男のSのレビュー・感想・評価

美術館を手玉にとった男(2014年製作の映画)
4.3
ジャケットが味のある佇まいだったから、事実に基づいた映画かと思いきや、ご本人出演のドキュメンタリーで驚き。
個人的には面白かった。

30年に渡り、20州46の美術館に自ら作製した贋作を
100作以上も無償で寄贈し続けた男、マーク・ランディス。

アートとは?本物とは?価値あるものとは?
いつもわけわかんないなと思っていたことを
またぐるぐる考えさせられた作品。
でも描かずにいられないんだから、彼はアーティストなのでしょう。

「彼の行為自体がアートだ」と世間が急にもてはやしたり、彼の贋作を集めた美術展を開いておいて「オリジナル作品を作ったら?」と皆が言うこと自体

とてもナンセンスというか、尊大というか、すごいマウントとってくるなというか、拝金主義だなというか…
“結局、美術界(?)なんも価値観かわっとらんやん感”がすごい。
彼の展覧会にきてるくせに、皆腫れものに触るような距離の取り方なのも面白い。(ランディスに心の病があるにせよ)
そして贋作だと最初に気づいたマシュー・レイニンガーは、学芸員の職を失ってるのも、面白いっていってはダメだけど、世間のルールの強さを感じたり。


対するランディスも、自分の存在証明のために“純粋な善意”で贋作を寄贈し続けた人という風に描かれてるけど、
いざ美術館へ寄贈しに出かける時の目ギンギン・ガンギマリ具合や、狡猾に証明書を偽造してるところとかを見ると、人を欺く快感を明らかに感じまくってるようだった。
だから、結局どんな人なのかよくわからない。

でも描くこと=生きることになっている時点で彼はアーティストだろうし、贋作であることにむしろ自分らしさがあるというか。

彼が「倫理的行動は常に成果を生む」とジョークを言ったのも
ハウトゥーサクシードからの引用だったりするんだけど(確か)
まるっとそのジョーク自体が、引用自体が彼らしさを表していたり。

唯一署名で描いたのが、ずっと味方でいてくれた母の絵だったっていうのも、すごくさもありなん。これだけ世に認められたら、自然と自分の名前で描きたくなるかな、そういうことなのかな。

「必要は発明の母だけど、継母なこともある」
学芸員さんの「南部の人間は変人になれてるのよ」には笑った
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