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危険なプロットのSのレビュー・感想・評価

危険なプロット(2012年製作の映画)
3.8
「ザ・オゾン監督作品」って感じでよき。
作家になる夢を諦め退屈な日々を送る国語教師・ジェルマンは、転校生・クロードの書く「級友の家族を覗き見する」かの様な小説に魅せられ、次第に現実と小説の狭間に追い詰められていく。
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読者は王だと言って物語を支配しようとする教師が
自らが暗に導くプロットで自滅したようにも見えるし、
クロードが求めていたものは、最初からジェルマンのような気も。

教師が諦めた“理想の自分=クロード”にも見えるから、
最初から彼らはふたりでひとつにも思えるし、
そうなるとラストはハッピーエンドにも見える。

クロードも一見ミステリアスだけど
その実はただの生活苦の少年。
事実よりも、垣間見こそが世間を美しく彩る。

教育やアート、中国に絡めとられるフランス…色々と皮肉に溢れてるけど、無教養すぎてこの作品の本当に面白い部分をちっとも理解できてない気がするのが悲しい。

それでもちょっとだけ調べると、ふたりが過ごす学校の名前が「ボヴァリー夫人」を書いたフローベールに由来するのは面白い。
ロマン主義的憧れを抱くボヴァリー夫人が、理想と現実の差に絶望し自滅していく感じはまさにジェルマンみたいだし。
「ボヴァリー夫人」の客観的な描写や作中の人物に寄り添う視点は、クロードの描く小説っぽい。
しかも、フローベール自身はロマン主義的な文学が大好きだったのに、むしろ嫌っていた写実主義的な部分を認められちゃって「ボヴァリー夫人は私なのです」と言ったとか?
てことは、ジェルマン=オゾンなのかな?
作中のふたりは学校を辞めることでその世界から抜け出して、理想と現実が初めてひとつになれるんだろうか。そうして客観的に世間を垣間見続けるの?


あと、ジェルマンを演じたファブリス・ルキーニは、
映画「ボヴァリー夫人とパン屋」で、ボヴァリー夫人と同名の美しい隣人に妄想大爆発しちゃう偏屈おじさんを演じてた気がするのも面白い。
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