KnightsofOdessa

自由のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

自由(2000年製作の映画)
4.0
[三人の男女が彷徨う豊饒の海と乾きの砂漠] 80点

密航に失敗した三人の男女がモロッコの砂漠を彷徨い歩くシャルナス・バルタスの長編五作目。いつも通り有効な会話をほぼ含まない映像表現の極北の様な作品。前作『家』とは打って変わって、白い砂漠と青い海に物憂げな表情を浮かべる黒人の顔という色の対比が眩しい。海岸のシーンは『美しき仕事』のように白い浜辺と青い海の対比が美しく、よく分からん要塞みたいなゴツい建物と柔和な自然の親和性の高さに驚く。

ただ、個人的には"決定的に美しいショット"がないように思えた。カテリーナ・ゴルベワやヴァレリア・ブルーニ=テデスキという圧倒的なヒロインがいなかったのも原因の一つだろう。『Few of Us』『家』にあった画の強烈さというのは、彼ら彼女らによっても支えられていたんだろう。悪くはないが、あまり心には引っかからなかった。

テーマは多分"流転と放浪"であり、現時点で最も強烈に観客を異邦人にする作用を持つ。
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