KnightsofOdessa

Few of Us(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Few of Us(原題)(1996年製作の映画)
5.0
[異邦人が導く魔術的な"死と疎外感"の旅路] 100点

超絶大傑作。カテリーナ・ゴルベワ可愛い以外の感情を完全に死滅させるシャルナス・バルタスの長編三作目。遊牧民トファ人の集落があるサヤン山脈にやって来たヘリコプターから一人の女性が降り立つ。ゴルベワさんである。物憂げとかそんな生温い表現を通り越して、最早"死"そのものみたいな顔をしている。物語はおろか、有効なダイアログも一切含まれず、常に異邦人であり続けるゴルベワさんの旅路にカメラが付いてきたような感覚に陥る。確かにこれまで観たバルタスの映画は、どれも観客を異邦人にする魔力が備わっているとは思うが、本作品ではそのエキゾチックさが桁違いだった。単にトファ人がアジア系の顔をしているとかいうレベルから離れ、より高次で展開する精神の"遠さ=距離感"があるのだ。

題名はリブニコフという作家の「我々は数少ない。本当に数少ないのだが、それよりもいちばん恐ろしいのは、我々が分断されているということだ」という言葉から来ているらしい。そうなれば、カンテミール・バラゴフ『Closeness』みたいな政治的な話も含んでいるのかもしれないが、正直そんな話は副次的な邪推に過ぎない。

テーマは恐らく"死と疎外感"についてなのだが、それにしては色が暖かかったように思える。だからこそゴルベワさんを抱擁するようにも突き放すようにも見えるのかもしれない。
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