イチロヲ

サリヴァンの旅のイチロヲのレビュー・感想・評価

サリヴァンの旅(1941年製作の映画)
4.0
喜劇映画で成功を収めた若手映画監督が、シリアスな社会派に転向するべく、浮浪者の日常生活を体験していく。作家性を刷新させようとする映画監督の顛末を描いている、コメディ映画。

出世の道を突き進んできた映画監督が、「人生苦を知らずに社会派を名乗ることはできない!」と一念発起。「浮浪者に変装して旅に出る→ナンダカンダあってハリウッドに戻される」という反復パターンが、喜劇的に繰り広げられる。

貧困を経験している女優志望のヒロインが、男装のパートナーとなって主人公に同行。男女の掛け合い漫才が主体となるが、貧民窟の日常を無声映画のように描写したり、主人公が忌避する喜劇とメタ的に繋がっていたり、随所に変化球が付けられている。

クライマックスに入ると、帰る場所がなくなった状態で、主人公が単独での急転直下を体験する。自分の居場所を見つめ直していくまでの畳み掛けが見事であり、ラストの独白が脳裏に焼き付く。
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