アキラナウェイ

暗くなるまで待ってのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

暗くなるまで待って(1967年製作の映画)
3.7
どうしてもこの邦題だと「暗くなるまで待って♡」というニュアンスに思えてしまい、ちょっとエロいラブコメなんだと思い込んでいた昔の自分に違うよと言ってあげたい。

オードリー・ヘップバーンが盲目の人妻役を演じ、当時のアカデミー主演女優賞にノミネートされたのも頷ける素晴らしい演技に魅せられる。

視覚障がいのあるスージー(オードリー・ヘップバーン)の夫サムが、謎の女性から預かった人形には麻薬が仕込まれていた。その麻薬を取り戻そうと悪党共が次々と身分を騙り、スージーの自宅を訪れる。彼らの正体に気付いたスージーは—— 。

もう、何せオードリー・ヘップバーンが美しい。60sのファッションも髪型もスラリとした細身のスタイルによく似合う。その上目線が合わない全盲演技が堪らない。

夫サムのかつての戦友を装ってやって来るマイク、刑事のフリをしてやって来るカルリーノ。そんな彼らを裏で操るロート。演じるアラン・アーキンが非常にサイコでハマり役。今年6月に逝去してしまって寂しい限り。R.I.P.

色んな変装をして、人形を探しに来る悪党共の努力も虚しく、靴の音で聞き分けて異変に気付くスージーの聡明さに感心する。

スージーの味方はただ1人。同じマンションに住むグロリアという少女。

目が見えないハンデを抱え、グロリアの助けを借りながら、スージーが孤軍奮闘する姿にヒヤヒヤ。クローゼットを開けたら、その扉の裏にはサムに人形を託けた女性の死体があるのも、見えないから良いものの、見えているこちらはひぇぇっと声が出そうにもなるってもんだ。

舞台として映されるのはスージーの自宅のみのワンシチュエーションスリラー。最後まで見事に惹きつけられる。

部屋中の電球を割って、暗闇を作り出して、ロートとの最後の対峙。

ガソリンを相手にぶち撒け、マッチに火を灯すヘップバーンの鬼気迫る表情と暗闇とが繰り返されるシーンが素晴らしい。

元が戯曲という事もあって、これは時代が移り変わっても色褪せない珠玉のプロット。

でもよ。

最後の最後、どう考えても不利な立場に立たされた盲目のスージーがどうやって一発逆転をかましたのかがわからず終いなのは些か残念。