アキラナウェイ

異人たちのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.6
安藤龍平。
じゃなくて、アンドリュー・ヘイ。

好きな監督なんだけど、気付けば監督の4作品全制覇。

山田太一著「異人たちとの夏」が原作。
舞台をロンドンに移した上での映画化。

ロンドンのタワーマンションに一人暮らすアダム(アンドリュー・スコット)は、11歳の時に交通事故で両親を亡くした40代の脚本家。ある日、幼少期を過ごした郊外の家を訪ねると、そこには他界した父と母が当時のままの姿で住んでいた。一方、アダムは同じマンションの住人である青年ハリー(ポール・メスカル)と恋に落ちていくのだった—— 。

青とピンクが混ざり合い、オレンジから赤に変わっていく夕焼け空の窓越しに映るアダム。

もう、序盤の映像の美しさに見惚れて一気に没入。そうか。35mmフィルムだからなのか。映像がとにかく優しく美しい。

高く聳え立つタワーマンションに、アダムはまるで世界から1人取り残されてしまったように孤独。その寂しさが観ているこちらにも染み入ってくる感覚。

タワーマンションに住むのはアダムとハリーの2人だけ。んな訳あるか!?とも思うが、その時点でこの作品が何とも不思議で非現実的な空気感を纏っているように思えた。

死んだ筈の両親との出会いは夢か現(うつつ)か。

郊外にある実家までうつらうつらと揺られる列車の中。この何処かで現実から夢へと切り替わるのだろうか。

ジェイミー・ベル、クレア・フォイが演じる両親は、大人になった息子の来訪に戸惑いながらも温かく迎え入れ、穏やかで優しい時間が流れる。カミングアウトのシーンは刺すような痛みを伴ったが。

アダムが不思議と子供に見えてくる。
その泣き方も。

「あともう少しだけ…」

両親との二度目の別れに泣いた。

そして、最後に用意されたもう一捻りの仕掛けも良い。

きっと日本で映画化された「異人たちとの夏」とは同じ原作とはいえ肌触りが違う筈。日本版も是非観てみたい。

孤独に生きる人に染み入る傑作。
映像の色味が好き。