本好きなおじぃ

エール!の本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

エール!(2014年製作の映画)
3.5
酪農家のベリエ一家に生まれた主人公のポーラ。
乳用牛を育てて牛乳やチーズを売りつつ、農地も経営する。しかしその一家はポーラ以外は耳の聞こえない、話すこともできないろうあ者の一家だった。

学校と家庭の行き来をしているポーラだったが、ある日、現村長が農地を壊して工場を建てるなどの表明をしたことから、怒った父が村長選に立候補することになる。
ポーラはそれを手伝うようになるが、あわせて、コーラスの講義で教員から年末にデュオで歌えとの指示が。
なかなか準備ができず、練習しろと言われ、ポーラは家にガブリエルを招く。そこであることが起こり・・・

また、パリで歌を学べと先生から提案を受けるが、それを聞いたポーラは、挑戦しようと思い立つも、家族のことを考えどうしようか悩む。
果たしてポーラの将来はどうなっていくのか。

この作品は、2021年の作品「コーダあいのうた」の下になった作品で、「コーダあいのうた」を観た後で見ても、そのことがよくわかる構成になっている。
直接的すぎる表現を控えたうえで余白で悩みを表現している点が、この映画をもとにした「コーダあいのうた」と大きく違う点ではないか。フランス映画の黙してなるべく語らない、そんなところをよく表しているようにも感じた。

しかし、歌を基軸にした内容は同じだ。
最後の歌「青春の翼」は、思春期に自らの旅立ちを葛藤する子供が、親へ贈るメッセージのようなものになっている。のびやかに歌う彼女の歌声が家族だけでなく、わたしたちの心を打つのは間違いない。それは、歌を歌う・聴く、それぞれの表情のその気持ちを、わたしたちが理解できるからだ。
だから、歌には何の国境も、何のハンディもない、そういうことをこの映画も感じることができる。