モネ

セッションのモネのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.0
【天才を産むための狂気】

パワハラ、という言葉が世に浸透したのはここ数年の事である。こうした問題は体育会系のイメージが強いかと思うが、意外にも、クリエイティブ業界や美術界ほど根強くある。
本作は中でも音楽業界におけるパワハラ教授と、彼に目をつけられた生徒の邂逅の物語である。

鑑賞後、1番に感じた感想は「リアルだなあ〜」というものであった。自分自身に似たような経験があり、それ故に今まで観ることが出来なかったからだ。
恐らくクリエイティブ職の中には、交通事故に遭っても会場に来た主人公に引かない人も居るのではないか…。

週刊少年ジャンプを象徴する言葉として「努力・友情・勝利」という有名なものがある。主人公の地元の親族はまさにそう言った人生を送り、お互いを称賛していた。こう言った人生こそが、幸せなのだと嬉々として語っていた。
対して主人公の学生生活は「努力・孤独・狂気」である。
そうなるのは「良い演奏をして教授に認められたい。世に自分の存在を刻みたい。」という欲求からだ。普通の人生では納得できないし、そう思うほど努力をしてきたのだろう。そしてその根源にあるのは劣等感である様に感じた。

教授のとったパワハラの手法は理解不能な人も多いかと思うが、あれは非常に理にかなっており、とてもリアルな人物像だと思った。有能な指導者には、あそこまで酷くはないが、ああいう人は結構いる。
彼の1番の目的は「天才演奏者を自分の手で育て上げる事」であり、その為に一度成功した手法を繰り返している。
彼は基礎を繰り返すことの出来る凡人に目をつけ、精神的に追い込み、それでもまだ練習し続けられる人をふるいにかけて、育成している。発破をかけるために他人をも利用して…

しかしこのストーリーで、あれほど爽快かつ真に迫るラストとは思いもよりませんでした。
全編を通して構図や画づくりもよく、観て良かった!と思える作品でした。
モネ

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