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ババドック 暗闇の魔物の福福吉吉のレビュー・感想・評価

ババドック 暗闇の魔物(2014年製作の映画)
4.5
◆あらすじ◆
アメリアは妊娠中に交通事故に遭い、それにより夫を失った。アメリアはそのとき生まれた息子のサミュエルを育てるために仕事と育児に励んでいた。しかし、サミュエルが学校で度々問題行動を起こすため、彼女を悩ませており、日々の忙しさもあって彼女が疲れ切っていた。ある日、サミュエルが「ババドッグ」という絵本を持ってきてアメリアに読んでほしいと持ってきた。それを読んで以来、二人の周囲で不可解な出来事が起こり始める。

◆感想◆
育児と仕事に追われるシングルマザーが「ババドッグ」という絵本と関わったために不可解で出来事に巻き込まれるというシンプルなストーリーながら、濃密で母と子の関係とそれぞれの思いがしっかりと描かれており、それでいて恐怖演出も優れていてかなり面白い作品でした。

主人公のアメリア(エッシー・デイヴィス)は交通事故で夫を失って以来、常に追い詰められ、疲労困憊の状態であり、精神的にもギリギリであることが分かりました。彼女の中で、夫を失って息子を得たという事実が心の奥底に根付いていて、息子の誕生日を素直に祝えない様子も彼女の心情が現れていて、異常さを感じざるを得ませんでした。

一方、息子のサミュエル(ノア・ワイズマン)は思ったことをそのまま言ってしまう性格で素直ですが、それが危険な行動に及んでしまうこともしばしばあり、前半の彼の姿はかなり受け入れずらく感じました。しかし、サミュエルは心の底から母を愛しており、窮地の中で「ママが僕を嫌いでも僕はママのことが好きだから」という言葉を発したときは心にぐさりと突き刺さるものがありました。

そして問題となる絵本「ババドッグ」は飛び出す絵本で絵柄はとても愛らしいのですが、本を読むとババドッグが読んだ人間を襲ってくるという内容になっており、その文面はかなり不気味に感じました。

ババドッグの読後、サミュエルがババドッグを見るようになって必死にアメリアに訴えるのですが、アメリアはサミュエルを否定し、そこからアメリアとサミュエルの間に軋轢が生じてしまいます。この加減が実に見事で、アメリアが常に精神状態がギリギリとなっているため、冷静な判断ができないことが事態を悪化させていき、オカルト的な怖さとともに、アメリアの人としての怖さが絡んできて、とても怖くて面白かったです。その中で、アメリアがサミュエルに対して思っていることが次々と吐き出されていき、この親子の問題の根っこの深さがホラーと絡まっていてストーリーとしても秀逸でした。

これほど気持ちを引き込まれたホラー作品は久しぶりで、とても面白い作品でした。上映時間84分の中で見事にストーリーをまとめていて素晴らしいと思いました。

鑑賞日:2024年3月22日
鑑賞方法:DVD
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