おいなり

ターミネーター:新起動/ジェニシスのおいなりのレビュー・感想・評価

2.8
監督が代わり、主演が代わり、テセウスの船ではないけれど、とにかく1・2が超名作になってしまったがために、同じパーツがひとつもないサイボーグと化しても脈々と作られてきたターミネーターシリーズ。
なんやかやうるさいファンは文句を言えど、まぁまぁ見れる佳作だった3と4(ドラマもあったね)と、打ち切りの山を築いた後、混み合ったタイムラインを一旦リセットして80年代に立ち返った本作「ジェニシス」。
サラ・コナーもカイル・リースもジョン・コナーも、面影すらない別人となってしまいましたが、シュワちゃんだけは現役。リブートするならもっと根本的に変えろとは思うが、誰にキャメロンとシュワちゃんの代わりができるねんと問われると、もう必死に過去の幻影に縋り付くしか選択肢がなかった制作陣の気持ちもわかる。

そんなこんなで公開された、冒頭30分だけ面白いターミネーターことジェニシス。前作でお披露目したフルCGのフルチンシュワちゃんを本作ではさらにパワーアップして、なんと老シュワちゃんとガチンコマッチ。意外と珍しかったT-800同士の重量感あふれるどつき合い、画の迫力だけは過去最高といっても過言ではない。だってどっちもシュワちゃんやからな。

一方その頃、律儀にT1の完コピ再現をしていたカイルに襲いかかるはまさかのT-1000。なんでいつも一体しか暗殺者送らんねんとか、T1のタイムラインにT-1000送ったら楽勝やんとか、散々ファンダムに煽られてきたスカイネットさんが「本気(マジ)」になっちまった!まるで歴史のifを見せられているよう。



しかし残念ながら面白いのはここまでで、ある意味シリーズの禁じ手だった過去→未来への時間旅行を平然と行ったり(2:3Dでもやってたけどね)、マルチバースを示唆してみたり、T-3000とかいうどこをどう切ってもT-1000の劣化にしか見えない全身急所のザコがラスボスだったり……と、もういかにもパッとしない汎用SFにスケールダウン。
火薬とアクションはまぁ派手だけど、別に俺っちはダイハード見に来たわけじゃなくて。シュワちゃん出して例のBGM流しときゃそれでターミネーターやろ?という志の低さが見てる間ずっとチラついてノイズに。

観客の裏をかいたろ!という脚本家のドヤ顔が透けるような気を衒いまくったストーリーも、搦手で攻められてるようでなんかターミネーターっぽくない。
全体的に漂う二次創作感・パロディコント感。ターミネーターじゃなかったらただのパチモン映画だけど、ターミネーターとしてもやっぱりパチモン臭いという。なんかよその国で作られたターミネーターのパクり映画に、大金はたいてシュワちゃんに出てもらったような感じというか……。中国ではヒットしたらしいですけどね。



ターミネーターより、核の炎より恐ろしい、「資本主義」という概念の下にコモディティ化してしまった超大作の成れの果て。本作がなかったらニューフェイトももう少し評価されたかもしれないが、そもそもアバター続編のために金が必要だったキャメロンが「本作は真のターミネーター!過去最高の続編!」と絶賛コメントを送って世界の失笑を買ったことを思えば、この結果もやむなしの感はある。エミリア・クラークは悪くない。

T-3000めっちゃ強い設定だとは思うんですけど、ただの磁石ですぐ無力化されてしまうの見ると弱すぎて笑ってしまう。そらこんなポンコツ作ってたら人類に負けるわスカイネットさん。
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