七沖

猿の惑星:新世紀(ライジング)の七沖のレビュー・感想・評価

4.3
〝ヒトの世紀が、終わろうとしている。〟
猿の明確な台頭を描いたシリーズ第二弾。
個人的にはシーザー3部作の中で1番好き。

この作品から、単なる人間と猿の対立ではなく、お互い内部に敵を抱えつつ歩み寄ろうとする過程を描くので、物語に一気に深みが出たと思う。
猿のシーザーと人間のマルコムは互いを認めてなんとか共存の道を探ろうとするのだが、人間の中にも猿の中にも相手をよく思わない仲間がいるせいで、なかなか上手くいかないのがもどかしい。
猿の子どものシーンは、希望が見えそうになってからの落差がつらい。

人間への憎しみを持つコバの「許しを得るポーズ」が段々そっけなくなっていくのが、シーザーとの心の距離を感じさせて上手い。
また、人側の猿攻撃派のドレイファスも家族写真を見て涙ぐんだりと、この人にも猿を憎むようになった何かがあるんだな、というのを自然と観る側に感じさせる。
主人公サイドのシーザーやマルコムからしたら警戒対象のコバやドレイファスが抱える奥深さがあってこそ、この作品は前作を凌ぐ素晴らしい作品になっているのだと思う。

それにしても、人間の善性をできるだけ信じようとするシーザーは、指導者として立派だな…。
人間に育てられたバックグラウンドがありきだとは思うが、不幸なアクシデントで互いに傷つけ合ったとしても、感情的にならずできるだけ共存の道を目指す姿勢は聖人(人じゃないけど)のようだ。
今の世界情勢を見ていると、なおさらそう思う。
七沖

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