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イーダのbennoのレビュー・感想・評価

イーダ(2013年製作の映画)
4.8
余白の多いスタイリッシュな画作り…斬新な構図…どのショットも溜め息が出るほど静謐で端正なモノクロの陰影美…。

冒頭、修道院でアンナと呼ばれていた少女が、傷んだキリスト像を仲間と修復し、庭に置くシーン…社会主義下で行われていた宗教弾圧を想像させます…。

1960年初頭ポーランド…戦争孤児として修道院で育てられたアンナ…ある日、叔母ヴァンダの存在を知らされ、彼女のもとを訪れます…。

ヴァンダの口から出た衝撃的な言葉…

「あなたの名前はイーダ…ユダヤ人よ」

突然知らされた自分の過去…これまでポーランド人として生きてきたアンナ…揺らぐアイデンティティ…。

イーダはヴァンダと共に自分の出生の秘密を知る旅へ…そしてそれはポーランドの歴史を知らしめます…。

ドイツとソビエトに蹂躙された被害国ポーランド…。
反ユダヤ派によるユダヤ人虐殺に至った加害国ポーランド…。
被害国でもあり、加害国でもあるポーランド…様々な想いがイーダにのし掛かります…。

イーダの両親はナチスではなく母国と思っていたポーランド人によって虐殺されていたのです…その時、虐殺された中にはヴァンダの息子も含まれていました…。


ヴァンダの決断…息子の亡骸をお墓に納め…モーツァルトの♬"ジュピター"の流れる中……。

そしてイーダの決断は…好意を持っていたアルトサックス奏者のユダヤ人青年のもとへ…ジョン・コルトレーンのバラード♬ "Naima"がうっとり…。

イーダは彼と生きる自由を選ぶのでしょうか?? …それはポーランドという国の矜持を捨てること…。

彼女の選ぶ道は…??

ユダヤ人として生きていくこと…?? それとも、ポーランド人として…??


バッハの♬ "私はあなたを呼ぶ、主イエス・キリストよ"が流れる中 …これまでの映像とは大きく異なり… イーダを大きく捉え、手ブレのある力強さ…真っ直ぐ前を向いて歩くイーダの姿が清々しい…。
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