アー君

トム・アット・ザ・ファームのアー君のレビュー・感想・評価

2.9
けっこう苦手な部類の映画作家なのだが、作品単体としてではなく〝監督グザヴィエ・ドラン〟として括って観てしまうというのは自分でも客観性が乏しいかなと自覚している。この作品のブルーレイはかなり高騰していたので、映画館サイドの企画上映であれば行くしかないかなと。ウン十年分ぶりの恵比寿ガーデンシネマでの鑑賞。(昔はよく行っていたな)

視聴後の感想としては悪いとは思わないし、言いたいことは漠然とわかるのだが、サスペンスとしては消化不良であり、対人間同士の描写には奥行きがなく閉塞感が強く窮屈であった。演出面は色々な名作を『良い意味で』盗んで自分なりにコラージュして作り上げている感じはする。しかし相変わらずの顔のアップ撮りにはヘキヘキしていまう。登場人物が少ないので引いて撮って欲しいなとは思うが、その撮影テクニックがないのかな? と勘繰ってしまう。

亡くなったギョームをめぐり家族や恋人を中心にストーリーが進行するが、ギョームの回想や農場のシーンをあえて見せない方法は日本映画の影響は少なからずあるのではないかと思う。

ギョームの兄であるフランシスとのタンゴの場面はタンゴのルーツは男同士から始まりであるが、同性愛的な演出を暗喩としてみせてるのは、ワザとらしさはあるがそれなりに凝った描写である。

途中のアメリカ批判は余計ではあるが、ラスト寸前の行動は私たちには想像になるが戻っても戻らなくても虚無感しか残らずトムの傷は癒えることはないだろう。

母親なんだけど女の勘でおおよそ気づくとは思うが、なんで今頃なのかな?(笑)

[YEBISU GARDEN CINEMA 13:35〜]
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