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不気味なものの肌に触れるのinazumaのレビュー・感想・評価

不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)
4.2
濱口竜介レトロスペクティヴにて。

師匠・黒沢清の『CURE』っぽかった。
「お前が魚で俺が水なのかもしれない」
「俺はお前に泳がされてるってことか」
今後きっと起こるであろう"支配"による混乱と恐怖を示唆するかのような、サラッと、メルヘンに、分かりやすく発せられるセリフが印象的でした。川の氾濫と千尋、2つの脅威は明らかに結びついていて、未完の続編『FLOODS』がとんでもなくアポカリプトな作品になりそうでゾワゾワします。完成を祈ります。

師匠とはまた似て非なる濱口作品独特の空気。「川」は本作と『悪は存在しない』の2つの世界を繋いでいるようにも見えました。会話の描き方もやっぱり上手い。千尋と直也が店で会話するシーンは本作の白眉ともいえるぐらい魅せられました。現実の風景を切り取ったような、とても自然で、でも会話の内容はどこか異様なものであるところがまたいい。二人の演技レベルが半端なく高いのもあるのでしょうが。染谷将太も凄かったけど、翻弄されるがままの石田法嗣の少年ぶりも素晴らしかった。

村上淳の存在、手の甲をアレするやつとか、いろいろな謎を残すところも楽しい。監督、お願いだから続編いつか必ず作ってください。

ちゃんと観た濱口作品は本作と『悪は存在しない』の2作品ですが、完全にハマりました。かつて『ドライブ・マイ・カー』に挑んだものの睡魔により断念した苦い思い出がありますが、濱口ワールドの虜になった今、再度観ると楽しめる気がする。
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