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ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!のRenのレビュー・感想・評価

5.0
完璧な映画。幼少期から何回観たか分からないくらい大好き。「ウォレスとグルミット?名前とキャラクターはなんとなく分かるけど作品は観たことないな〜....日本だとあんまりメジャーじゃないよね....」と思ってる人、とにかくこれだけ観てほしい!

トボけた天才発明家・ウォレスと、彼の忠犬・グルミットのドタバタ劇。物語は、グルミットの誕生日に自動散歩マシン(ポスターにもあるズボン型ロボット)をプレゼントしたところハイパー金欠になってしまったウォレスが、臨時収入のために部屋の貸し出しビジネスを始めると、そこに1人のペンギン・マッグロウが....という導入。
今観ても、29分間をたった3人(グルミットとペンギンに至っては一切台詞無し)で、1秒も無駄にせず魅せきる神業に感動する。ファンの間では今作がシリーズ最高傑作という声が大きいけど、それには完全同意。

ベッドが90°傾いて足元の床に穴が開き一階のダイニングまで強制落下させられる早起きマシンに、パンに自動でジャムを噴射する謎ガジェットまで、ひみつ道具的ワクワクもある世界観。グッズが欲しくなってしまうキャラ萌えもあり、そういった表面的な要素だけでも文句無しに楽しめる。電気工学の本を読むくらい賢いのに飼い主に振り回され続けるグルミットが不憫で健気で可愛すぎる。
主人公はウォレスなのだけど、役割としてはウォレスがワトソンでグルミットがホームズ、という逆転現象が起こっているのもユニークで楽しいポイントだと思う。

映画好きに刺さるようにプレゼンをするなら、これは「Eテレ的ほのぼの日常ものの皮を被ったヒッチコック」。クレイアニメと侮るなかれ、ジャンル映画としてバキバキに仕上がっている。だけどキャラクターは可愛いワンちゃんとペンギンとマヌケな人間なので、コメディとスリルが同じ画角に同居する。このバランス感覚が全て。
雨の使い方、ライティング、カメラワークなど、ニック・パークというド天才は要素の分解力もそれをアニメーションで再構築する力もすごいけど、それらを100%体現する「生きたキャラクター描写」が上手すぎると感嘆せずにはいられない。

『~ ペンギンに気をつけろ!』と言えば、ラストのトレインアクションのシークエンス。アニメ映画の枠組みを飛び越え、映画史に残る名アクションだと断言したい。スリリングかつユーモアかつアイデアかつカタルシスが猛スピードで押し寄せる、今作の締めに相応しい大団円!

このシリーズは基本ハズレ無しなので、今作でハマったらぜひ全作品観てほしいなというのがウォレスとグルミット大好き芸人の願い。
『~ ペンギンに気をつけろ!』→『~ 野菜畑で大ピンチ!』(長編)→ 『~ 危機一髪!』→『~ チーズ・ホリデー』→『~ おすすめ生活』(2〜3分×12本の短編集)→『~ ベーカリー街の悪夢』
の順でおすすめだけど、いきなり長編映画でも全然OK!
ひつじのショーンの原型となったキャラクターが初登場した次作『~ 危機一髪!』は、ミステリー・サスペンス性もホラー度数も上がっており、個人的軽トラウマの一作。

以下、好きなシーン
○『ミッション:インポッシブル』に匹敵する、緊迫の宙吊りアクション。
○ ペンギンが窓枠にメジャー(巻尺)を引っ掛けてシャーッと降りるところ。
○ グルミットの家出を窓越しに見つめるペンギン。雷雨も相まって完全にホラー。
○ 瓶にスポッ!とハマるところ。
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