KnightsofOdessa

汚れなき祈りのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

汚れなき祈り(2012年製作の映画)
3.5
[ルーマニア、閉鎖的な宗教コミュニティと悪魔祓い事件について] 70点

2012年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。クリスティアン・ムンジウ長編三作目。2005年にモルタヴィアの修道院で起こった修道女殺害事件、通称"タナク悪魔祓い事件"を記録したタティアナ・ニクレスク・ブランによる2つの小説を基にしている。物語は孤児院で共に暮らしたヴォイキツァのもとにドイツで働いてたアリーナが帰ってくるところから始まる。丘の上にある粗末なコミュニティで、修道女たちと彼女たちをまとめる30歳の神父が暮らしていた。アリーナとヴォイキツァは過去には友人以上の関係にあったことが示唆されるが、アリーナの不在を神の存在で埋めたヴォイキツァは変わってしまった。二人は一緒にいて互いを助けたいが、神の存在がそれを尽く邪魔していく。神父が聖書の言葉を文字通りに信じきっていて、彼にすがるヴォイキツァはその言葉を信じているのだ。ムンジウはこれについて"宗教をあまり文字通りに解釈すべきではない"としている。ただ、彼女たちを批判的に描いているわけではなく、あくまで中立な立場は崩さない(そもそも原作者ブランがBBCの記者であり、ムンジウはその中立な立場からのルポを気に入って映画化している)。最新作『ヨーロッパ新世紀』に似たコミュニティの映画だが、同作では積層した問題の数々をMRIを模した手法で全体像再構成を行っていたのに対し、本作品はその層が単一で単純すぎることの弊害を描いているように思える。アリーナを拘束したあの場で、それが悪魔の仕業でないと考えた人はいなかっただろう。ちなみに、主人公が女性二人なのは前作『4ヶ月、3週と2日』と似ている。前作ではギリギリ最後まで支え合っていたのだが、本作品では互いに罪悪感を抱きつつ最終的にはハシゴを外してしまっているのが辛いところ。
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