カトゥ

不思議惑星キン・ザ・ザのカトゥのレビュー・感想・評価

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)
4.6
雑誌やweb記事のサブカル特集には必ず登場する、世界一有名なカルト映画。といってもかつての東側、特にソビエト本国では普通に有名な作品であり、若者達が日常会話で劇中の台詞を引用する程度には定着したSF作品だったという。つまり、ロシア版スターウォーズみたいなものか。

僕は断片的に(例えばサブカル気味のカフェとかイベントで)眺めたことがあるだけで、きちんと通して鑑賞したことが無かった。今回、地元でリマスター版が上映されたのは、僥倖だったといえる。ありがとうシネギャラリー、ありがとうサールナートホール。
ついうっかり、2回観てしまった。素晴らしい作品だった。
 

よくもまあ、国民の、つまり同志の血税を使って、こんなに凝った、そしてゆるーい映画を作れたものだ(褒めている)。あまり観客側を気にしていないような、いやきちんと作り込んだのだがボタンを掛け違えたような、そもそもこれがソ連では正統なSFなのか、と観ていてわからなくなってくる。
誰も観たことが無い風景を延々と描き、なおかつきちんと漂うロシア風味と、時折挟まれるうっかり抜けたのかわざとなのかわからない場面、そんな不思議な混淆は、この映画だけのもの。人類史で二度と作れないだろう、と思わせる。
 
アメリカは、スターウォーズを作った。続編が今も作られ、儲け続けている。
そして、ソビエトロシアはキンザザを作り、国は潰れ、でもその1作は永遠の名作となった。それでいいじゃないか、と思えてしまう魔法が、本作にはかかっている。
 
しょぼくれたおっさんがしょぼくれた若者と困ったり歌ったり、異星のしょぼくれた人達と交流する(そして、変な乗り物でふわふわ飛んだりする)お話に興味がある人は、万難を排して観てみましょう。映画を観たあとに、「クー」って言いたくなります。「号泣した」とか「考えさせられた」とか、そういうレビューとは程遠い名作。
 
誰もの想像を超えたが、しかしどうしてもロシア的、という知人の評がしっくりくる。そんな映画はなかなか無い。
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