アキラナウェイ

不思議惑星キン・ザ・ザのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

不思議惑星キン・ザ・ザ(1986年製作の映画)
4.3
"世界観"を作れる、作家性のある作品が好きだ。世界観とはすなわち、文化や言語や種族や伝統をも創り出すオリジナリティ。

宮崎駿は腐海とその毒に怯えて暮らす人々を創り出し、ジョージ・ルーカスは未知なる惑星とフォースの哲学を創り出し、大友克洋はネオ東京と健康優良不良少年の絆を創り出した。

ゲオルギー・ダネリヤ監督の本作もまた、未知なる世界観で我々を魅了し、カルト的人気を誇る作品の1つである。

1980年代の冬のモスクワ。
建築家のマシコフと"ヴァイオリン弾き"の学生ゲデヴァンは、異星人を名乗る裸足の男の持つテレポート装置により、キン・ザ・ザ星雲の砂漠の惑星プリュクに飛ばされてしまう。何とか地球へ帰る為、2人の長い旅が始まった—— 。

もう!!何なのよ!!
このシュールさは堪らない。

星の住民は地球人と同じ姿をしているが、ボロを纏い、独自の言語と文化を持ち合わせている。

彼らの話し言葉は「キュー」と「クー」のみ。前者は罵倒語、後者がそれ以外を表す。

両頬を両手で2回打ち、両腕を左右斜め下に広げて、掌は相手に向け、ガニ股でご挨拶。

クー。

マッチは、"カッツェ"。
鼻につける鈴は、"ツァーク"。

どうやら、マッチに希少価値があるらしい。

クー。

テレパシーを使い、高い知能を持つ彼らはロシア語を理解する。まぁ、そうじゃないとストーリーが進まない。

この星は、チャトル人とパッツ人という2つの人種に分けられ、支配者であるチャトル人に対して被支配者であるパッツ人は、独特の礼儀作法を強いられる。先程の挨拶である。

クー。

もう、ひたすらに地球に帰れないマシコフとゲデヴァン。テンポはゆったりとしていて、些か集中力に欠くものの、この世界観はめちゃんこクセになるゾ。

クー。

どシュールなノリ。
宇宙船の造形やその汚れ方、古さはバッチリ好み。ジャケ写にある宇宙船の機械式の駆動音が好きだわ。

クー。

独特のBGMと独特の言語感覚。
これは個人的にクセになる。
間違いなくドラッグムービー確定。
ハマらない人にはきっと
地球が何回回ってもハマらない。

今度誰かと挨拶する時は「キン・ザ・ザ」方式でやってみるつもり。

クー。