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フリー・ゾーン 明日が見える場所のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.7
 ユダヤ系アメリカ人のレベッカ(ナタリー・ポートマン)はエルサレムに数ヶ月住んでいたが、イスラエル人の恋人と婚約を破棄し、ユダヤ人女性のハンナ(ハンナ・ラズロ)のタクシーに乗り込む。ハンナは用があると言ってレベッカを降ろそうとするが彼女は降りず、やむなく共にヨルダンに向かうことになる。ハンナはパレスチナ軍のロケットで負傷した夫の代わりに、ヨルダン、イラク、サウジアラビアの国境にあるフリーゾーンへ、貸した金を返してもらいに行く用があった。フリーゾーンに到着すると彼女たちは、ハンナの夫が取引の交渉を行なっていたパレスチナ人女性のレイラ(ヒアム・アッバス)に出会う。しかしレイラはハンナに金はここにはないから返せないと断る。金は店主のアメリカ人の息子ワリッドが持って行ってしまったのだという。ハンナは彼女に彼の家に案内するように迫り、お金をめぐる3人の旅が始まる。冒頭、主人公であるレベッカの10分にも及ぶ長回しのクローズ・アップ・シーンが素晴らしい。車の窓から外を眺めるレベッカは突然感極まり泣き出す。涙がアイシャドーを剥がし、黒い涙になり頬を伝う。彼女たちは最初ヨルダンの国境を目指す。国境にいた兵士に所在を疑われるものの何とかヨルダンに入った2人は、車でヨルダンとシリアとイラクの国境線上にあるフリーゾーンを目指し、車を走らせる。

 フリー・ゾーンというのはわかりやすく言うと、「自由貿易区」ということになる。この地域では関税が廃止され、ヨルダンとシリアとイラクの住民が自由に物の売り買いを行う場として機能しており、そこでは様々な中古車の売り買いが行われる。ハンナはパレスチナ軍のロケットで負傷した夫の代わりに、彼が受け取るはずだった大金を受け取るために危険な道を遠路はるばるやって来たが、時間が押してしまったために約朿のお金を受け取ることが出来ない。ここでは物語の設定上、アメリカの店主となっているが、アモス・ギタイはこの3人の女たちの間にもっと巧妙に政治世界への風刺を忍ばせる。ハンナはどうしてもお金を受け取らなければならず、今日はフリーゾーンから家に帰宅した店主のアメリカ人の息子ワリッドの家に向かうが、そこでは大火事の中、人々が逃げ惑っている。父を憎むワリッドが衝動的に彼らの家を放火し、再び姿をくらましたらしい。レベッカはレイラの夫から、彼らパレスチナ系アラブ人のむごたらしい過去を聞く。映画においてレベッカ、ハンナ、レイラの3人の女性は、アメリカ、イスラエル、パレスチナの暗喩として機能する。
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