アー君

ロバート・アルトマンのイメージズのアー君のレビュー・感想・評価

3.5
幻視に悩まされるキャサリン役のスザンナ・ヨークは、自身が書いた童話「ユニコーンを探して」の朗読しており、この世界が架空の物語であることを暗に示しているのだろう。

幻覚状態に囚われた彼女の前に幾度も現れる亡霊(男性)たちは、作りかけのパズルと同様に断片的であり、幾度も彼女を苦しめる存在である。そして自分自身との対面(自己像幻視)と殺意、ドッペルゲンガーとの出会いは死への予兆。すべてのパズルのピースが繋ぎ合った絵はお伽話の一角獣であり、これは純潔の象徴による暗喩である。

静謐な美しい風景を映しだす光と影の映像、鏡の描写が特徴的であり、人物の被写体を効果的に大きくして、観客に恐怖心を与えるズーム演出はこの時代にしては秀逸であった。

音楽は「スター・ウォーズ」「スーパーマン」でお馴染みの大御所ジョン・ウィリアムズと現代音楽家ツトム・ヤマシタの和魂洋才のコラボレーションであるが、躍動感のある豪華なクラシックは皆無であり、シーンと音が見事にユニゾンした不安を煽る伴奏は効果音のような旋律であった。

現在ではDVDが高騰しており、劇場ぐらいでしか鑑賞ができないロバート・アルトマンのサイコサスペンスを名画座で堪能することができた。
ロマン・ポランスキー「反撥」とかの雰囲気が好きな方はお勧めです。

[早稲田松竹 19:50〜]
アー君

アー君