さて、
本日取り上げる作品は、
1957年制作の『突撃』です。
1914年。
独仏戦争の真っただ中。
戦争の功を焦るフランス将軍は、カーク・ダグラス大佐率いる小隊に、
難攻不落のドイツ軍のアリ塚の攻略を命じる。
それは無謀ともいえる作戦だったが、軍の上層部の命令に背くわけにはいかず、3波に分けての攻撃を開始。
最前線で飛び出すカーク・ダグラス一波だったが、
敵の砲撃が激しく前進することができない。
第2波以降は、
壕の中から出ることができないありさま。
その様子が弱腰に見えた将軍は、
なんと自軍の壕に向かっての砲撃を命じる。
戦闘の後、
カーク・ダグラス小隊のうち3人が、
『敵前逃亡』の罪で軍法会議にかけられる・・・
軍の上層部のブルジョアぶりと、
最前線の兵士たちの悲壮感が際立つ傑作。
血まみれで戦う兵士をみながら、
ワインを飲み歓談する上層部。
頭蓋骨骨折をして、
意識不明なのにもかかわらず、
担架に乗せられ処刑台に括られる兵士の悲哀。
勇敢に戦った勇ましい兵士が、
牧師に罪の許しを乞うどうにもならない人間の弱さ。
正義漢を発揮するが、
国家の旗の下では無力なカーク・ダグラス。
まったく無慈悲で不条理な物語であるにもかかわらず、
最後に流れるヒューマニズムが胸を打つ。
キューブリックの移動撮影はますます快調で、戦闘シーンは全体の4分の1ほどしかないにもかかわらず、その迫力は彼の『フルメタルジャケット』に劣らない。
決して見逃してほしくない傑作です。