迷子、落とし物、失くしたもの、lostという言葉のもつ響き、どれがしっくりくるのだろう。
ショーン・タンの描く世界は、英語だけでは覆えないもっと広く大きな拡がりが感じられる。
最初に見たのは『アライバル』の表紙だったと記憶しているけれど、中は未読、読み通したのは『セミ』と『エリック』だけ。彼の作品に触れると人は、ひとりの一生分という短い時間だけでなく人類という大きな物語の一部であるという壮大なstoryに触れされてもらえた気がして、圧倒されてしまう。
この物語は迷子に出会いお世話をし、もうひとつの世界に出会うお話だと思った。もうひとつの世界。それはあくせく働く中でもしかしたら見えなくなっているかもしれない世界、でもある。でも、確かにそれは存在する。見方を変えれば見えてくるかもしれないよ、と教えてくれる優しい物語。
異質なものとの出会いを見逃さず、丁寧に向き合い、その声を聴き、感情に寄り添い、良い方向に仕向けようと努める。多くの人がそういう人であればもっと日々健やかに生けていけるんじゃないかな。私はどうだろう、そんな風に優しく生きれているかな。
子どもの頃に小動物を拾って途方に暮れたことのある人なら誰でも好きな物語。ガラクタでも魅力を感じたら拾ってしまう人も。
断捨離といってゴミ袋にまとめて捨ててしまったものたちのことを思い出してちょっと反省しながら見た、今度からはちゃんと、末永く大切にできるものばかりを選び取るようにしたい。