なっこ

メタモルフォーゼの縁側のなっこのレビュー・感想・評価

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)
3.0
原作未読。

放送を楽しみにしていた作品。年齢差のあるふたりが出会って友だちになってお互いに少しずつ変化する、こちらも人生の出会いの素晴らしさを描いた作品。

ふたりの語り合いの舞台となる縁側がまた素敵。日本の建築の最も良い部分。外でもあり内でもあるあいまいさのある空間。初めて訪れたとき縁側から中に通されたのも印象的だった。

ふたりの年齢差から、若さの眩しさと老いの陰りを感じるシーンがある度になんかドキドキしてしまって、不穏なことが起こらないと良いなぁと思ってしまった。私自身はこんなに年の離れた友人を持ったことはないけれど、年齢差のある人と友人になれることはとても素敵なことだと思う。キラキラしたふたりの友情は見ていてとても多幸感があった。そして、そんなファンタジックな出会いの妙と現実のバランスがとても良い塩梅だなと感じた。ヒロインが学校でとても地味な存在であることがそれとなく描かれているところや漫画が下手ウマなところなど。storyはそれなりに面白いけど。

へなちょこな字だと私が書いた中身までもがへなちょこに思えて…

かつて大好きな漫画家にファンレターを書いたのに自分の字の下手さ加減に投函できなかったゆきさんのエピソードとちょっと重なる。それが書道を始めるきっかけになって書道教室まで開くようになったという。
何が何につながっていくのか、その先を生きてみないとわからない。終わってみればあああれがきっかけだったのかと、自分のターニングポイントを振り返ることが出来る。でも、変化していくその途中は先が見えなくてただ苦しいものなのかもしれない。こんなことやって何の意味があるのだろうとか思っちゃうものなのかもしれない。

確かに人生で完璧な一日だと言えるほど充実した日は、片手で数えられるほど僅かだ。
でも記憶に残らない程の冴えない日々があるからこそ煌めくその一日が際立つのだと思う。

彼女が出会ったBLは、登場人物を応援したくなるような漫画。読んでる間は一緒にその世界を生きている。一緒にいろんなことを感じて、心の中で共感したり応援したりなじったり、自分のことのように忙しい。その描写はまさに、私の普段の中国ドラマ三昧の日々と酷似していてすごく共感した。その世界を共有してくれる人と語り合いたい気持ちもよく分かる。

何かを好きになることは、そこからまた新たに世界を拡げてくれる。字の汚さや絵の下手さとか、自分の未熟さに気付かされることもあるかもしれないけれど。それも含めて、出会わなかったら見えなかったものを見せてくれる、知ることが出来る。そんなメタモルフォーゼの縁側に私もいるのかもしれない。
自分の心の中にあるそういう場所をこれからも大事にしたいなと思わせてくれる作品でした。
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