めるしなさん

プロスペローの本のめるしなさんのレビュー・感想・評価

プロスペローの本(1991年製作の映画)
4.0
グリーナウェイ初鑑賞、圧倒された
物凄い数の人のしかも裸体を、舞台装置として使うのね
演者というより背景セットの一部となっていて、だからこその画面の豪華絢爛さ、惜しげもない贅沢さ
特に、水中を揺蕩うセイレーンのような女性たち(裸体)がこの世のものではないような美しさだった
あと、キャリバンの優雅な身のこなし!彼のダンスが凄すぎて、バレエを見ているような気持ちになった。題材もクラシカルだし
この手の芸術的作品にありがちな話がわからないまま終わるというわけでもなく、筋がきちんとあって、ドラマとしても楽しめた。さすがシェイクスピア

プロスペローの魔法の仕組みはわからないけど、綺麗なカリグラフィーの文字が朗読と重なる演出で、文字に書いたことを現実に起こしてるように、紙とペンで世界を作ってるように見えた
やっぱり作家はその世界の神様なんだなって

そして、知識と見識のある賢者の選択はかくあるべきと思わされる一方、赦しがどれくらい報われるものかはわからないなと思うようになってしまった
性善説に立っていたのに…大人になって信じきれなくなってしまった自分が悲しい
権力やお金に執着のない美しき持つ者たちが、欲に塗れた持たざる者に食い荒らされるお話たくさん見てきたから…現実世界でもきっとそういうことたくさん起こってるんだと思う
それでも、さあ私の身体を好きなだけ蝕んでいきなさい、それを私は赦そう、ということなら、もはや宗教的境地の自己犠牲だよね
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