Tラモーン

仁義の墓場のTラモーンのレビュー・感想・評価

仁義の墓場(1975年製作の映画)
3.7
深作欣二のヤクザ作品は定期的に観たくなる。


終戦直後の新宿。テキ屋一家河田組の構成員である石川力夫(渡哲也)は、兄弟分の今井幸三郎(梅宮辰夫)ら仲間とともに、中野を拠点に暴れ回っていた三国人愚連隊を襲撃する。抗争の末、三国人一味は逮捕され今井は組を起こし力を付けていく。しかし、衝動の抑えられない性分の石川は暴力的な暴走を続け、次第に居場所を失っていく。


戦後の混乱期を衝動的に、太く短く、破天荒に駆け抜けた実在のヤクザ石川力夫の実録物語。
演じた渡哲也は当時34歳だと…??顔面の迫力どうなってんねん。

ストーリーはというと兎に角ハチャメチャに攻撃的で衝動的なヤクザの暴力的な半生。一切成り上がりすらしない『スカーフェイス』という感じか。

ヤクザといえば組のため親分のため兄弟分のためと義理とメンツを重んじるのが昔気質であるが、この石川という男はそんな常識を無視して突っ走る。
自分の暴走で親分を困らせて、お灸を据えられれば逆ギレするような火の玉ボーイ。

"組の看板大事にできねぇようなやつは本当の男になれねえぞ"

地元大親分に説教された直後に、その大親分の車に放火し、自分の組の親分からそのことを咎められれば怒りに任せて斬りかかる始末。

東京を追い出されれば、強姦して無理やり情婦にした知恵子(多岐川祐美)に身体を売らせて逃亡費用を稼がせたり、逃亡先の大阪で薬中になって東京に戻ってきちゃったり。

なんだこれ、仁義もクソもねぇじゃねぇか。

それでもやりたい放題、自分の好きなようにギラギラと生きる石川のバイタリティと、渡哲也の怪演から目が離せない。

特にかつての兄弟分である今井との決別のシーンは緊張感がたまらなかった。

かの有名な遺骨を齧るシーンも何一つ説明が無いのがいい。この感情移入の難しい主人公をどう捉えるかは観た人間に委ねられるべきだ。

墓参りの最中に襲撃されるシーン、クドイくらいのスローモーションと飛び散る遺骨、飛んでいく風船と血糊が強烈に印象的。
やるせ無いに尽きるラストシーンもかなりショッキング。

個人的にかなり好きだったのは河田組長を切り付けたあと知恵子の部屋に駆け込むシーンで、窓を叩く指に着いた鮮血がよかった。

"開けてくれ!酒くれよ!"

石川力夫という男はとにかく自分の気の向くままに、動物のように生きたかった男なのかもしれないな。
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