てつこてつ

さらば愛しき女よのてつこてつのレビュー・感想・評価

さらば愛しき女よ(1975年製作の映画)
3.5
レイモンド・チャンドラーの「大いなる眠り」と「さらば愛しき女よ」を読んだのは中学生の頃。さすがに内容までは覚えていないが、ハードボイルドとはこういう物かと独特の雰囲気と描写が強く印象に残っている。翻訳者は清水俊二さんで、当時は大作映画の字幕も沢山手掛けていた方。ちなみに、今も活躍されえいる戸田奈津子さんは清水俊二さんに弟子入りした後に字幕翻訳家としてデビューしている。

本作の映画版は、本当に久々に観るが、孤高の探偵フィリップ・マーロウを演じたロバート・ミッチャムが小説で読んだ時に残っているイメージ像より、若干、年を取り過ぎている感はあるものの、声が渋いので、ナレーションが多用され、且つ、原作から持ってきたような気障で洒落た台詞回しも合っていて、ダンディーさは十分に出ている。マーロウもそうだが、刑事たちがトレンチコートに帽子を被るという当時のクラシックなファッションもカッコイイ。

出所したての大男から恋人の行方捜しを依頼されたマーロウ。ヴェラという名前のその女性の行方を追う過程で巻き込まれる宝石の取り行きの現場での殺人事件。実は、これらの事件は全て一人の人間によって仕組まれたもので・・。

作品の世界感が映像に良く出ている。1940年代のロサンゼルスの若干無法地帯のような殺伐とした街並み、チャイナタウンの床屋に、黒人専用のバーに娼館。マーロウが宿泊する古びたホテルを照らすケバケバしいネオンライト・・

キーパーソンとなるシャーロット・ランプリング。年を重ねた今でも美しい女優さんだが、若かりし日の美貌と存在感に目を奪われた。シルヴィア・マイルズもいい味を出している。

驚いたのが、シルヴェスター・スタローンが殆ど台詞が無いチョイ役ながらも物語の進行に重要な役割を果たす役どころとして出演している事。この作品のすぐ後に「ロッキー」で大スターの座を手にしたとは感慨深い。

この映像化作品は、何となく途中で黒幕の正体が分かってしまい、原作小説のほうがより雰囲気があった感があるが、95分という上映時間にまとまっているので見やすい作品ではある。
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