イチロヲ

マルチプル・マニアックスのイチロヲのレビュー・感想・評価

マルチプル・マニアックス(1970年製作の映画)
3.5
見世物小屋を利用した暴力行為に没入している肥満体の女性(ディヴァイン)が、恋人の浮気のショックにより、精神を病んでしまう。「この世は神も仏もない!」をトラッシュ感満点に描いている、16ミリ撮影のブラック・コメディ。

ジョン・ウォーターズの人間性が、怪優ディヴァインの姿を借りて、映像からニュルニュルと滲み出ている。ヒッピー・ムーブメントの隆盛に背を向けながら、脳内を侵食する宗教的観念に抗っていく様子が描かれる。

傷心に苛まれたディヴァインは、教会という名のレズビアン専門のハッテン場にて、初対面の売春婦と十字架プレイを堪能。発狂してからの大暴れぶりは、完全に怪獣映画のノリであり、巨大ロブスターの襲撃を含めて、大笑いしながら鑑賞することができる。

「カメラを凶器にして世界を怖がらせたい!」という監督の意気込みに、ディヴァインが呼応していることが分かる。恐怖を過剰に感じ取ると、表情筋が無意識的に持ち上がり、ヘラヘラした笑顔で固定されてしまう。そんな現象を体感することが可能。
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