高解像度のデジタルリマスターという事で期待をして映画館で鑑賞する。この日が来るのを何百年もさまよっていたのかもしれない。
鑑賞後の評価としては粗削りなところは否めないが優秀な映画であった。70年代初頭の保守的なアメリカでありながら耽美な映像を堪能できた。
正味90分ぐらいなのだが、120分ぐらいの長さを感じてしまったが、それだけジョン・ウォーターズの熱意は感じられた。
しかし前半の見せ物シーンは無駄に長く意味不明で痴話話も退屈だった。見どころである本物の吐瀉物(俗語ゲロ)を食べる行為はエメトフィリアという異常嗜好だが、監督側で規制を入れている感じがして中途半端であった。
中盤以降のディヴァインが暴行を受けて、レズビアンと知り合い、教会での神具を使った性交渉と聖書を暗唱しながら処刑場へ歩いて行くキリスト一行が交互に映し出されるカットは官能的であり、男性の異性装者と女性の同性愛者の行為は倒錯が果てしなく逆転していくことを証明する場面でもある。
それにしてもロザリオは祈るための装飾神具であり、キリストが背負う十字架は拷問用の刑具であるが、純潔なカトリックに対してかなり挑発的な態度は拭いきれないが、結局のところ聖と性は裏表一体であることを伝えたかったのだろう。
後半に向けたラストは悪くはないのだが、個人的にはロブスターに襲われるあたりでエンディングを迎えても問題はないと思う。そのような終わり方は唐突すぎるかもしれないが、敢えて答えを求めない「なぞかけ」という方法論もある。
それでもロブスターのシーンは長く感じてしまった。この怪物に予算がかかったので勿体なく長時間撮影した感じもした。
ディヴァインが走って民衆を襲うのも印象的かもしれないが、凶器を持たせては欲しかった。エンドは百歩譲ってそこまでである。
(ゲリラロケなので厳しいのかな笑)
ラストの警官達の登場は蛇足であった。あまりにも演技が下手だし物語として『素直にまとめてしまった』のがとても惜しかった。
この映画は理屈で考えたり、斜に構えずに鑑賞をする事をお勧めします。
「奇想天外映画祭2022〈Vol.4〉」
[K's cinema 18:55〜]