瀬戸内海の小島で石の運搬の仕事をしている一家が、時代の波にのまれ、職を手放し島を離れるまでを描いた作品。
「石船」と呼ばれる、石の運搬をする小舟のことは本作ではじめて知った。
石船が積んできた石を海に落とすとき、危うく転覆しそうなくらい船が急に傾く様子には驚かされた。
三部作の前作以上にドキュメンタリー色が強く、記録映画やNHK『新日本紀行』を見ているかのようだった。
物語を引っ張るための劇的な展開はほとんど用意されていない。瀬戸内の穏やかな海そのものみたいだ。
高度成長の時代、本作の主人公夫婦のような形で職を追われ、故郷を離れる決断を迫られた人々が沢山いたのだろうと想像させられる。
生きていくための決断。これからも生活は否応なしに続いていく。これまでの生活を捨てることになったとしても、今までの夫婦の歩みが失われることはない。