ぐら

千年女優のぐらのレビュー・感想・評価

千年女優(2001年製作の映画)
5.0
”...別にどちらでも良いのかもしれない、だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんですもの“

綺麗事じゃない本心がすごく腑に落ちた
人は皆何かに一生懸命になっている自分が好き
その事実がよくないことのように、一途に相手を思うことや、一生懸命何かに取り組み真剣に向け合っていることだけが美徳とされがちなのは、なんでなんだろう
きっと会えなくても思い続けてる時間、人生が幸せだっただろうなと、ただの物語なのに羨ましく思った

いつか きっと
会えなかったことがずっといつかきっとで居続けられたことに繋がる


愛を追い続ける魔法をかけたのは自分自身だったところも、そうすることが幸せだと直感的に感じていたってことなのかな
白い妖怪が未来の老いた自分自身だったことで、恨めしく思うのはその頃の自分の若さや純真さ、心から一途に思える気持ち自身だったと思う
年をとるごとに、夢を見られなくなって
純真さよりも打算的で、損得勘定なしに物事を考えられなくなっていく、そんな大人にならないよう、その頃の純真さを恨めしく思いつつも、とどめてほしいという強い気持ちが自分で自分自身にかけ続けた呪いの正体だったと思う

世の中で暗黙の了解になりつつある“美徳”とされるものではなく、生っぽく悲しい大人の性みたいなところが感じられるところがリアルでよかった。


現実と作品がグラデーション的につながっていくその狭間で変えられない流れと自分の気持ちに翻弄されながら生きてきた千代子の人生、人生自体が女優だった
物語で千代子を語りつつも、千代子自身が物語な構成ですごくよかった

千代子がふけたときは、自分で自分を嫌いになった瞬間
監督も、千代子を追い続けた人生、千代子を好きな自分がすきだった

今敏が作中の監督だったのかな
すきを追い続ける自分が好き。
今敏の出棺時の曲が千年女優のエンディングなところも監督の人生感じるし、人生が監督ですごくいい



(映像メモ)

寝ている時やこけた時の重力による髪の毛の落ちた形が美しくてすきな表現だった

最後のセリフのシーンだけかすみがかっていて、あちらの世界との間を感じる表現でよかった

グラデーションや狭間というのがポイントだったように思う

走っているシーンが繋がれている部分、方向が一定じゃないことで、あらゆるところを駆け巡っている感じがでてよかった

赤が好きな監督なのかな
単純な赤じゃない深めの赤が良い
パプリカもそんな感じだった気がする
まだ見てないけどパーフェクトブルーの青はきっと赤を引き立てるための反対色なんだろうな
ぐら

ぐら