Toineの感想文

ドリアン・グレイの肖像のToineの感想文のレビュー・感想・評価

ドリアン・グレイの肖像(1945年製作の映画)
3.8
【耽美!退廃!オスカー・ワイルド!】
現在オスカー・ワイルド祭りを自宅で個人的に絶賛開催中です。
彼の作品の中で1番好きなのは「幸福の王子」ですが今回投稿いたします「ドリアン・グレイの肖像」も大変素晴らしいでのす。
3回映画化されたとのことで3作品とも鑑賞したので年代順に感想文を投稿して行きたいと思います。

今作は1945年に映画化された作品です。
ゴシックホラーとしてのクオリティーが高くて目が幸せでした。
舞台セットが完璧だったので後はドリアン青年役の方が美しければそれで満足と思いながら観進めました。
結果、思っていた系統とは違いましたがちゃんと整ったお顔の青年だったので何故かホッとしました。
目力があってミステリアス。
線が細くて何を考えているか分からない雰囲気抜群の俳優さんでした。

冒頭でドリアン・グレイを描いた画家バジル氏が言った「美は災いをもたらす」というどう考えても伏線張りましたよね的な台詞が不穏で良き。
中二心にも刺さる。
作中の言葉の紡ぎ方が逐一美しい。
流石ワイルド様。

そしてカメラワークもめちゃめちゃ計算されていて凄い。
温室?テラス?の向こう、扉の奥におさまる女性のショットや床に斜めに伸びる婚約者の影など。
奥行きにこだわった構図がいちいちバチッと決まっている。
メリハリがあって素敵です。
お上品な衣装デザイン、お屋敷のお洒落なインテリアや高い天井も良かったなー♡

今作は白黒映画なのですがドリアンさんの肖像画だけカラーで見せたりとアイディアも素晴らしいと思いました。
年月を経て変化した絵の恐ろしいこと!!
CGが無い時代の工夫を凝らした見せ方がたまらん。
願いを叶えるというドリアンさんのご自宅のヒエログリフみたいなエジプトの猫ちゃん像。
その猫ちゃんが嫌でも目に入る構図で何度も何度もフレームインさせる。
やたら意味ありげに撮る。面白い。
作中でさり気なくワイルド様の詩を朗読するシーンや開いた本のとあるページにビアズリー氏の挿絵が載っているのも観ていて楽しかったです。

ラスト30分で雲行きが怪しくなってからのお約束の退廃的ホラー展開もクラシックで美しい♡
揺れる照明。光と影。残酷な現実。
中盤は少しダレますが古い映画のゆったりとした時の流れもまた一興。
風流で哀しくて無惨で恐ろしい。
とても素敵な映画時間でございました♡♡
原作小説も読み直してみようと思いました。