【陰キャが描くメグレ警視の視線と胸の内】
コナンくんに登場する目暮十三(めぐれ じゅうぞう)氏ではない方のジュール・メグレ警視のミステリー。
原作はマルク・シムノンの同名小説。
パトリス・ルコント監督で映画化だなんて何という贅沢!
FILMARKSさんのジャケット写真のシルエットがふくよかで可愛すぎる♡♡
主演はジェラール・ドパルデュー氏ですか。
何とも言えない哀愁ただようメグレ警視に仕上がっておりました。
素晴らしいです。
ルコント監督作品を観て感じるのはいつも言葉足らずという事。
言葉では無く行動で示したいタイプなのかしら?
確かに理屈では無く重く湿った情や念のようなものが心臓に響いて来ました。
独特でゆっくりと舐め回すような不穏なカメラワーク。
わざとでしょうけど小刻みな手ブレのような画面の捉え方。
かと思えばしっかりと画角に収められた血に塗れたエレガントなドレス。
あらゆる場面で執拗に繰り返されるメグレ警視の視線の演技。
人を思いやるメグレ警視のキャラクターをルコント監督はあのように見守りの演出で表現したかったのですね。
だから本題の推理よりも人間ドラマに重点を置いたのでしょう。
始まりから終わりまで派手さがなく淡々としている。
一見すると大人し過ぎるように見えるのに決してそうでは無くて。
心の奥底に激しい情熱を秘めているような。
ずっと小さな炎が揺らめいているような。
そんな監督の内向的で確実な演出が狂おしい程ツボです。